法人設立で「株式会社」を選択するメリットとデメリット
~最新の法改正・住所非表示措置から見る、創業者の守り方~
大阪の堺の司法書士の植田麻友です。
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相続・遺言を含めた生前対策と会社の登記を専門とした司法書士事務所です。
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これから起業される皆様、あるいは個人事業からの法人成りを検討されている皆様。
「自分の会社を持つ」。それは多くのビジネスパーソンにとっての夢であり、大きな第一歩です。しかし、いざ設立の手続きを始めようとすると、最初に突き当たる壁があります。
「株式会社にするべきか、それとも合同会社にするべきか」
近年、AmazonやAppleの日本法人が合同会社であることや、設立費用の安さから合同会社を選ぶケースも増えています。しかし、依然として日本の新規法人設立の多くは「株式会社」が占めています。なぜ、多くの創業者はコストがかかっても株式会社を選ぶのでしょうか?
今回は、司法書士の視点から、株式会社を設立するメリットとデメリットを徹底解説します。特に、2024年(令和6年)10月から施行された「代表取締役等住所非表示措置」は、創業者のプライバシーを守る画期的な制度です。この点についても詳しく触れていきます。
1. 株式会社を選ぶ3つの大きなメリット
株式会社という形態が選ばれ続けるには、明確な理由があります。ここでは、特に創業期のビジネスを加速させ、創業者自身を守るための3つのメリットをご紹介します。
メリット①:圧倒的な「社会的信用」と公証役場の役割
株式会社の最大のメリットは、その名称が持つ「ブランド力」と「信頼性」です。
「株式会社」という冠がついているだけで、取引先や顧客に対して「しっかりとした組織である」という印象を与えます。特にBtoB(対法人)ビジネスにおいては、新規取引の条件として「株式会社であること」を暗黙の前提としている大手企業も少なくありません。採用活動においても、求職者は「合同会社」よりも「株式会社」の方に安心感を抱く傾向が依然として強くあります。
【なぜ株式会社は信用されるのか?~公証役場の存在~】
この信用の裏付けとなっているのが、設立時の厳格な手続きです。株式会社を設立する際、会社の憲法とも言える「定款(ていかん)」を作成しますが、これは必ず「公証役場」で公証人の認証を受けなければなりません。公証人とは、長年法曹界(裁判官や検察官など)で経験を積んだ法律のプロフェッショナルです。彼らが第三者の目線で、「この会社の目的は適法か」「設立手続きに不正はないか」「実態があるか」をチェックすることになります。公証人はそれぞれ審査の基準は違いますが、不審な点があれば追加資料を求めることも珍しくありません。
一方、合同会社にはこの公証人による定款認証が不要です。手続きが簡単な分、誰でも容易に作れてしまうため、詐欺的なペーパーカンパニーに悪用されるケースも残念ながら存在します。「公証人のチェックを経ている」という事実こそが、株式会社のコンプライアンスの証となり、銀行融資や口座開設の審査においてもプラスに働くのです。
合同会社でも銀行口座開設することができないわけではありません。ただ、株式会社に比べて公証人の定款認証を経ていない以上信頼が少し低いと判断される可能性が高いということです。
メリット②:資金調達の多様性と拡張性
2つ目のメリットは、ビジネスを大きくするための「資金調達」の選択肢です。
ビジネスを拡大するには資金が必要です。合同会社の場合、資金調達の手段は主に「融資(借入)」や「社債」に限られます。しかし、株式会社であれば「株式の発行」による資金調達が可能になります。
- 返済義務のない資金調達: 株式による出資は、銀行融資とは異なり、原則として返済義務がありません。
- 投資家からの支援: ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家からの出資を受ける場合、彼らの多くは「株式」による投資を前提としています。将来的な上場(IPO)やM&A(バイアウト)を目指すのであれば、株式会社であることは必須条件と言えます。
- ストックオプションの活用: 優秀な人材を確保するために、自社株を報酬として渡すストックオプション制度を活用しやすいのも株式会社の特徴です。
メリット③:代表取締役の住所非表示措置(プライバシー保護)
今回、最も強調してお伝えしたいのがこの3点目です。これまで株式会社の最大のネック、あるいはリスクとされていたのが「代表取締役の自宅住所が誰でも見られてしまう」という問題でした。登記簿は誰でも法務局で閲覧可能です。その際に身分証の提示もありません。つまり、悪意をもって法務局(またはインターネット上の登記情報サービス)で登記簿を閲覧し、代表取締役の住所を知ることは全く違法でもなく、問題なく可能であったということです。
これまでの課題:自宅住所が全世界に公開されていた
現在、会社の登記簿(登記情報)は、法務局に行かなくてもインターネット上で誰でも数百円で取得・閲覧が可能です。これまでの法律では、一定の例外を除き、代表取締役の「氏名」と「住所」を登記簿に載せることが義務付けられていました。
これにより、自宅兼オフィスで起業した女性経営者がストーカー被害に遭う、強引なセールスマンが自宅に直接押しかけてくる、といった深刻なトラブルが発生していました。「会社は作りたいが、自宅住所を晒したくない」という理由で、起業を躊躇したり、高額なバーチャルオフィスを契約せざるを得ない創業者も多くいました。
2024年10月からの劇的な変化
しかし、令和6年10月1日より施行された改正商業登記規則により、「代表取締役等住所非表示措置」が導入されました。
所定の手続きを行うことで、登記簿上の住所を「◯◯県◯◯市」や「東京都◯◯区」といった最小行政区画までの表示にとどめる(番地などを非表示にする)ことが可能になったのです。
なぜ「非表示」でも許されるのか?
ここで重要になるのが、先ほどメリット①で触れた「公証役場」の存在です。
住所を非表示にすると、「本当にそこに住んでいるのか?」「架空の人物ではないか?」という疑念が生まれるかもしれません。しかし、株式会社設立時の定款認証において、公証人が以下の確認を行います。
- 発起人等の印鑑証明書等による実在性の確認
- 実質的支配者リストの作成と確認
つまり、「公衆(登記簿)には住所を見せないが、公的機関(公証人・法務局)は正確な住所を把握し、本人確認を厳格に済ませている」という仕組みが整ったのです。これにより、株式会社の信用力(メリット①)を損なうことなく、創業者のプライバシー(メリット③)を守ることができるようになりました。
この制度を利用することで、自宅を本店として登記する場合でも、安心してビジネスに集中できる環境が整ったと言えます。
ただ、代表取締役の住所を非表示にした場合であっても、代表取締役に住所の変更があれば変更の登記は必要となります。公には開示されないものの、法務局ではきちんと把握されており、場合によっては非表示が停止し、住所が開示されることもあるのです。
代表取締役の住所非表示措置については別途コラムも作成しておりますので、是非ご覧ください。

2. 株式会社のデメリット:コストと手間の比較
もちろん、メリットばかりではありません。合同会社と比較した際の明確なデメリットについても、包み隠さずお伝えします。
デメリット①:設立・維持コストの高さ
最大のデメリットは、やはり「お金」です。株式会社と合同会社では、設立時にかかる法定費用(国や公証役場に支払う費用)に大きな差があります。
【設立費用の比較(司法書士への報酬を除く実費)】
● 株式会社:約20万2,000円~
- 登録免許税:最低15万円
- 定款認証手数料:約3万~5万円(資本金額による)
- 定款印紙代:電子定款なら0円(紙なら4万円ですが、現在紙で定款を作成する人はほぼいません)
● 合同会社:約6万円~
- 登録免許税:最低6万円
- 定款認証手数料:不要(0円)
- 定款印紙代:電子定款なら0円
このように、スタートラインに立つだけで約14万円以上の差がつきます。初期費用を極限まで抑えたいスモールビジネスにおいて、この差は小さくありません。
定款認証を経ないことは信用の低下にはなる可能性がありますが、コストはかなり抑えることができます。
デメリット②:役員任期と重任登記の手間
コストの話は設立時だけではありません。ランニングコストにも違いがあります。
株式会社には、取締役や監査役などの役員に「任期」があります(原則2年、最長10年)。たとえ家族経営で役員のメンバーが変わらなくても、任期が満了するたびに「再選(重任)」の手続きを行い、法務局へ登記申請をする必要があります。この際、登録免許税(1万円または3万円)と、司法書士への報酬が発生します。
一方、合同会社には役員の任期がないため、人が変わらない限り、半永久的に役員変更登記は不要です。
デメリット③:決算公告の義務
株式会社には、毎年の決算内容(貸借対照表など)を官報やウェブサイトで公表する「決算公告」の義務があります。官報に掲載する場合、年間約7~8万円程度の掲載料がかかります。
3. 司法書士からのアドバイス:あなたに最適な選択は?
ここまで、株式会社のメリットとデメリットを見てきました。最後に、プロの視点から「どちらを選ぶべきか」の判断基準を整理します。
株式会社を選ぶべき人
- BtoBビジネスを展開する人: 大手企業との取引を視野に入れている場合。
- 資金調達を考えている人: 投資家からの出資や、将来的な上場を目指すスタートアップ。
- 採用に力を入れたい人: 優秀な人材を集めるためのブランド力が欲しい場合。
- 自宅兼事務所で起業する人: 「代表取締役等住所非表示措置」を活用し、プライバシーを守りたい場合。
合同会社を選ぶべき人
- BtoC(対個人)ビジネスの人: 飲食店や美容室、Webサービスなど、屋号(店名)が重要で、会社形態があまり問われない業種。
- とにかく初期費用を抑えたい人: 副業からのスタートや、一人社長でミニマムに始めたい場合。
- 家族経営・資産管理会社: 外部からの出資や役員の入れ替わりが予定されていない場合。
おわりに
会社設立は、単なる「手続き」ではありません。あなたのビジネスの「器」を決める重要な経営判断です。
特に今回ご紹介した「住所非表示措置」は、新しい制度であり、適用を受けるためには定款の記載方法や登記申請書の作成において専門的な知識が必要です。「条件を満たしていないため非表示にできなかった」という事態を避けるためにも、最新の法改正に精通した専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。
当事務所では、お客様の事業ビジョンをヒアリングした上で、株式会社・合同会社の選択から、電子定款によるコスト削減、そしてプライバシーを守るための登記申請まで、トータルでサポートいたします。
夢への第一歩を、盤石な体制で踏み出しましょう。会社設立に関するご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
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私が記事を書きました。
中小企業をを元気にする活動をしています!!

司法書士・行政書士/植田麻友
| 1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。 |






