昔ながらの会社の定款、大丈夫?~堺市の司法書士が教える「あるある」注意点と見直しのすすめ~

昔ながらの会社の定款、大丈夫?

~堺市の司法書士が教える「あるある」注意点と見直しのすすめ~

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。


はじめに|定款、放置していませんか?

堺市内でもよく見かける「昔から続く会社」の中には、会社設立時の定款を何十年もそのまま使っているケースが少なくありません。
しかしその定款、実は現在の法律や実態に合っておらず、登記手続や経営判断に支障をきたしている可能性があります。

この記事では、堺の司法書士が現場でよく出会う「昔ながらの会社の定款あるある」4つの注意点を、専門家目線でわかりやすく解説します。


① 株券を発行する会社になっている

2006年の会社法改正以降、株式会社は原則として「株券を発行しない」会社となっています。
しかし古い定款では、「株券を発行する」と明記されたままの会社が多く、登記簿上もそのように扱われているケースがあります。

実際に株券を発行していればまだ良いのですが、この定款規定がある会社の多くは実際に株券を発行していない会社になっております。定款に規定があるものの、それを把握していなかったり、あるいは把握しているものの、株券そのものを準備していないことがほとんどです。この場合に、注意なのが株券を発行していないことで過去の株式の譲渡が無効になる可能性があるということです。

株券交付がなければ譲渡は無効になる

会社法上、株券発行会社では、株式譲渡の際に株券の交付がなければ効力が生じないとされています。(会社法第128条)。
また、実際に株券を発行していない場合でも、税務署から「発行してない譲渡は無効」と指摘されることもあり、トラブルの火種となり得ます。

株券発行の定めがあるにも関わらず、気づかないまま株券を譲渡することは将来的に株式譲渡が無効に可能性があり、おすすめできません。

▶ 定款変更により「株券を発行しない」とし、株券発行の定めを廃止する登記を行うことが推奨されます。


② 株式譲渡制限規定がない

譲渡制限がないと、株主が自由に第三者へ株式を譲渡できるため、経営と無関係な人が突然株主になる可能性があります。株式をある程度自由に流通させたい会社であれば、この規定は不要ですが、会社としてリスクを認識せずに、株式の譲渡制限に関する規定を置いていない会社もあります。極端な話ですが、全く知らない人が株式を保有する可能性もあるのです。

また、重要な影響として、株式に譲渡制限を付けない場合、非公開会社であっても取締役の任期が「最長2年」に制限される点が挙げられます(会社法336条1項)。
これは見落とされやすい実務上の盲点です。

定款記載例(推奨)

当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。

この一文を入れることで、株主構成を安定させるだけでなく、役員任期の延長(最長10年)も可能になります。なお、取締役会非設置会社の場合には、上記承認機関が株主総会となることが一般的です。譲渡承認機関を代表取締役にすることも登記上可能ではありますが、疑義のある点もあり、現在ではあまりおすすめはできません。

目的をもって、株式の譲渡制限規定を入れていない場合を除き、基本的には株式の譲渡制限に関する規定は入れることをおすすめしています。


③ 取締役の任期が短すぎる(+職権解散のリスク)

古い定款では「取締役の任期=2年」となっていることが多く、そのままにしていると2年ごとに役員変更登記が必要になります。
なお、登記を12年実施せず放置してしまうと、「みなし解散」すなわち法務局による職権解散の対象になることもあります(会社法472条)。これは、取締役の最長の任期が10年であることからそれを超えた年月登記されていないということは、取締役の登記がなされていないことを指し、事業継続に疑義があるからと言われています。任期については常に意識し登記を忘れないようにいたしましょう。

職権解散になると…

・商業登記簿に「職権により解散」の文字が記載される!

・信用調査・融資に大きなマイナス!

・復活登記(継続登記)にもコストと手間がかかる!

▶ 株式に譲渡制限を設けた上で、任期を「10年」に見直すことで、登記漏れのリスクを軽減できます。


④ 実態のない「取締役会設置会社」になっている

定款に「取締役会を置く」と定められているにもかかわらず、実際には取締役として動いているのは1名しかいない、ということは珍しくありません。以前は、取締役会と監査役を置くことが義務であったため、その名残で取締役3名以上、監査役1名以上を置いている会社はあります。しかし、現行法では、会社の形態として「取締役1名」でも可能です。

1名にするかはともかくとして、実態のない取締役会であるよりも実際に経営に関与する役員に厳選することがおすすめです。

また、取締役会・監査役を置く会社の中で家族経営の会社は、この4名の員数を確保することも困難です。もし、役員のうちの誰かがご逝去された場合には、手続きが煩雑になる可能性もあり、そのことを考えても実際のない取締役会設置会社であれば、思い切って取締役会・監査役を廃止することもひとつであると考えます。

取締役会には必要な員数があります

取締役会を設置するには、取締役が最低3名+監査役1名以上が必要です(会社法326条1項・2項)。
この要件を満たしていない場合、登記申請時に不備として却下されることもあります。

▶ 現実に合わせて「取締役会非設置会社」に変更すれば、意思決定や株主総会も簡素化され、日常業務の効率化が図れます。


Q&A|定款見直しに関するよくある質問

Q. 昔の定款をそのまま使っていても問題ないですか?
A. 表面上は問題なくても、法改正や実務に適合していない可能性があり、登記や相続、承継時に支障が出ることがあります。

Q. 株券は実際に発行していなくても廃止登記が必要ですか?
A. 定款に「発行する」と明記されていれば、登記簿も株券発行会社扱いになります。整合性を保つためにも登記を変更し、株券を発行する旨の定めの廃止が望ましいです。

Q. 任期切れの役員変更登記を忘れるとどうなりますか?
A. 最悪の場合、法務局による職権解散(みなし解散)となり、信用を失う可能性があります。

Q. 取締役が1人でも問題ないですか?
A.取締役会非設置会社(取締役会を置かない会社)の場合は問題ありません。ただし、定款で最低員数を定めている場合に「1名以上」「1名」でない場合には、定款と整合性が取れなくなりますので、定款も確認するようにしましょう。


司法書士に依頼するメリット

・定款のチェックから見直しポイントを明確化

・株券発行廃止・譲渡制限・任期変更などの定款変更支援

・株主総会議事録・登記申請書類の作成代行

・職権解散リスクの早期察知と対応策のアドバイス

堺市で多数の中小企業をサポートしてきた司法書士だからこそ、現場に即した的確なご提案が可能です。


司法書士費用

手続き内容 司法書士報酬(税込) 登録免許税
株券発行の定め廃止登記 72,000円~ 登録免許税30,000円
譲渡制限規定の変更登記 72,000円~ 登録免許税30,000円
取締役任期の変更と定款変更(登記を伴わない) 33,000円~
取締役会・監査役設置会社の廃止・役員変更 120,000円~ 登録免許税70,000円
定款診断・相談 22,000円~

※会社の規模や手続き内容により費用は変動します。正確な金額はご相談時にお見積もりいたします。


まとめ|古い定款は静かなリスク。定期的な見直しが経営を守る

  • 株券、譲渡制限、任期、取締役会――古い定款の落とし穴は意外と多い

  • 登記ミスや職権解散を防ぐためにも、現実に合わせた定款見直しが重要

  • 堺市内でも「定款のスリム化」に取り組む企業が増えています


最後に|定款の見直しは堺市の司法書士にご相談ください

定款は「会社のルールブック」であり、静かに会社経営を支える根幹です。
気づかないうちにリスクを抱えてしまわないよう、今一度、内容を見直してみませんか?

堺市で定款変更・登記・会社運営の相談ができる司法書士をお探しの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
地元に密着したサポートで、あなたの会社を将来にわたって守ります。

 

 

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。
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