遺言公正証書もデジタル化。デジタル遺言の活用とその留意点

遺言公正証書もデジタル化。デジタル遺言の活用とその留意点

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

相続・遺言を含めた生前対策と会社の登記を専門とした司法書士事務所です。

堺での相続相談は司法書士事務所Mayまで。


1. 遺言公正証書の原本が「紙」から「電子データ」へ

最も大きな変更点は、公正証書そのもの(原本)の扱いです。

これまで公証役場で厳重に保管されていた原本は「紙」が基本でした。しかし今後は、原則として「電子データ(PDFなど)」で作成・保存されることになります。

従来も電子データでも保管されていましたが、原則紙保管であったところが、原則電子データとなることは大きな変更です。

2. 公証役場に行かなくても可能となる。「Web会議」での作成

これまでは、遺言者や契約当事者(嘱託人)が公証役場に直接出向いて、公証人と対面で手続きを行うのが原則でした。

今回の改正により、嘱託人が希望し、公証人が「相当である」と認めれば、Web会議システム(オンライン)を利用して手続きを完結できるようになります。

  • 体が不自由で役場への訪問が難しい方
  • 遠隔地に住んでいる方
  • 多忙で日中の時間を確保しにくいビジネスパーソン

こうした方々にとって、公証役場に行くことは負担が大きいため、制度の活用ができれば遺言の作成の推進につながるとのいえるでしょう。

3. 「正本・謄本」もデータで受け取れる

公正証書を作成すると、その写しである「正本」や「謄本」が交付されます。これまではもちろん「紙」でした。

今後は、希望すれば「電子データ」として発行・交付してもらうことが可能になります(※所定の手数料がかかります)。

もちろん、「手元に紙で持っておきたい」というニーズにも応え、これまで通り紙の書面で交付してもらうことも可能です。利用目的に合わせて、紙かデータかを選べるようになります。

4. すべての公正証書がデジタル化するわけではない

では、すべての公正証書がデジタルになるのでしょうか? 答えは「NO」です。

重要な手続きであるからこそ、例外も定められています。例えば、事業用融資の保証人になる際に本人の固い意思を確認する「保証意思宣明公正証書」など、一部の書類は法律の定めにより、引き続き「紙」での作成が必須となります。

また、膨大な添付資料があり、すべてをPDF化するのが現実的でない場合なども、例外的に紙での作成が認められます。

5. 「公正証書遺言」作成の流れ

公正証書遺言は、「公証役場(こうしょうやくば)」という場所で、法律のプロである「公証人(こうしょうにん)」に作成してもらう遺言書です。

【基本的な作成の流れ】

  1. 証人2名以上の立会いが必要です。
  2. あなたが公証人に対し、遺言の内容を口頭で伝えます
  3. 公証人が、あなたの意思を正確に法律的な文章に書き起こします
  4. 公証人が、内容を読み上げ、あなたと証人が確認します。
  5. 全員が署名・押印して、完成です。

司法書士に依頼をいただいた場合には、内容の作成や確認を行うのは司法書士となります。公証役場と事前にやりとりを行い当日に向けて準備をします。

  • 司法書士のサポート
    • ご相談者様の財産(不動産、預金など)を一緒に確認し、必要な書類(戸籍、印鑑証明、不動産の登記事項証明書など)を集めるお手伝いをします。
    • ご希望に沿って、法的に万全な遺言書の原案を作成します。
    • 公証人と事前に全ての打ち合わせを行いますので、当日はスムーズに進みます。
    • 守秘義務のある専門家として「証人」になることも可能です。(※相続人や受遺者は証人になることはできません)

6. 「公正証書遺言」の“最大のメリット”

私たちが公正証書遺言をお勧めする最大の理由は、相続が起こった後、ご家族に1番負担がないからです。

・無効になるリスクが低い。

※無効になるリスクはゼロではありませんが、自筆証書遺言よりは低いと言われています。できる限りリスクを回避するために公正証書をおすすめします。ただし、本人がきちんと自分の意思で作成していることが大前提ですので、ご自身で内容を確認できなければ作成はできません。

・原本が公証役場に安全に保管されるため、紛失・改ざんの心配がありません

※ただし死亡しても公証役場から通知が来るわけではないので、相続人・ご家族で遺言を作成することを把握しておく必要があります。なお、死後に検索も可能です。

家庭裁判所の「検認」が不要です
(※自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という中身の確認手続きが必要で、時間と手間がかかります)

※検認手続きとは

検認(けんにん)手続きとは、自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した人(相続人や保管者)が、家庭裁判所に申し立てて行う手続きです 。遺言書の偽造や変造を防ぎ、その内容と状態を公に確認・保存するのが目的です。なお、公正証書遺言と、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言は、この検認手続きが不要です。

 

検認が不要なため、相続が始まったらすぐに、司法書士がその公正証書遺言を使って、ご自宅の名義変更(相続登記)や銀行預金の解約手続きをスムーズに進めることができるのです。

ただし、作成してもご逝去後に公証役場から遺言を作成している旨の通知が来るわけではありませんので、当事者で把握をしておくことは必要です。

7.デジタル遺言の活用:「リモート」の流れはどうなる?

1.WEB会議(テレビ電話)で作成
ご自宅のパソコンなどから、WEB会議システムを使って公証人と顔を見ながら打ち合わせや作成ができます。証人も、それぞれ別の場所からオンラインで参加できます。

※スマートフォン・タブレット不可。PCが必要となります。

2.ハンコが不要に!「電子署名」でOK
従来の署名・押印(ハンコ)に代わり、「電子署名」(マイナンバーカードや、ペンタブレットでのサインなど )で本人確認と手続きが完了します。

3.遺言書は「電子データ」で保管
作成された遺言書の原本は、紙ではなく「電子データ」として公証役場の安全なシステムに保管されます。

 


 まとめ:より身近に、より便利になる公証制度

今回のデジタル化は、法務省が進める民事手続きのIT化の一環です。

公正証書の原本が電子データで管理され、Web会議での作成が可能になり、謄本などもデータで受け取れるようになる。これにより、公証制度は私たちにとって、より利用しやすく、身近なものになります。

遺言、相続、契約、そして会社の定款認証など、人生やビジネスの重要な局面で私たちを守ってくれる公正証書。その新しいかたちに、ぜひ注目してみてください。

 

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1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。
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