【会社設立】株式会社を設立する準備/取締役編

【会社設立】株式会社を設立する準備/取締役編

司法書士の植田麻友です。

新たに株式会社を設立する場合、また経営判断の中で取締役を追加する場合ということがあるかと思います。今回は特に株式会社を設立する際の取締役の選任とその選任方法についてお話させていただきます。多くの会社にとって、取締役とは経営において重要な役割を果たす者であり、安易に決めることはおすすめできません。今回の記事を参考の上、取締役の選定を行っていただくのが良いと考えます。

取締役の役割とは

会社(株式会社)に取締役が必要であることは理解していても、その取締役の役割・義務についてはなかなか明確にお答えできる方は少ないと思います。ですので、まずは、取締役の役割について整理していきましょう。

取締役は会社法で定められている役員です。会社法では「取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。)の業務を執行する」とあり、会社の業務執行に関する意思決定を行うもので、経営に関して重要事項を決定する権利を持つのが取締役です。

取締役は、一般の社員(従業員)との異なり会社に雇用されているわけではありません。あくまで、会社と取締役は委任契約で結ばれていますので、会社がその取締役が会社の経営によって適任ではないと判断した場合には、その役を解くことが可能です。この点、従業員であれば容易に解雇することは難しいのですが、会社にとってはある意味、いざという時に解雇(解任)しやすいとも考えられます。

一方で、取締役を解任するには、会社が簡単に決めることはできず、株主総会で解任決議をする必要があります。これは普通決議(原則過半数の決定)で足りますが、その解任に「正当な理由」がない場合には、解任された取締役は残存任期に相当する役員報酬額や対象慰労金額等について会社に損害賠償請求をすることが可能です。また、取締役を解任するということは、当該会社に紛争があるということが登記簿にも示されてしまう増すので、金融機関や取引先に心証が非常に悪くなることが考えられます。

※「正当な理由」については総合的に判断されますが、個人の感情については正当な理由に該当しません。また、正当な理由は会社に立証責任があり、非常に重い負担となります。

しかし、取締役については任期があるので、問題が生じた場合には、株主総会にて「再選しない」という選択肢をとることも可能です。任期については、1年から10年の間で決定することが可能です。その任期は定款に定められており、株主総会の決議により変更が可能となります。

取締役は経営の決定に関わる方を選ぶ!

解任にはリスクがあるので選定は慎重に!

配偶者(妻・夫)を取締役に選ぶ理由

多くの会社で代表取締役の配偶者(妻・夫)を取締役を置いていることが多いかと思います。理由としては数点考えられます。主に、①役員報酬を支給するため②経営の決定に責任を持ってもらうための2点です。

ほとんどの場合は①であることが多いです。実際に配偶者(妻・夫)がどの程度経営に関わっているかは会社により異なります。もちろん、何もしていない人に報酬を支給することはできません。その前提ではありますが、取締役という経営判断の責任を負っている以上役員報酬が支給しやすくなる可能性はあります。

※この点については税理士によくご相談の上判断をお願いいたします。

ただし、配偶者(妻・夫)を取締役に選ぶ場合には何点か注意があります。

「もし、離婚するような状況になった際に、忘れずに辞任をしてもらう」ということです。実際に離婚したにも関わらず、配偶者(妻・夫)が取締役に就任している状態も珍しくはありません。特に家族経営の会社においては、取締役が記載されている登記簿を日常的に確認しているわけではないのでうっかり登記をすることも忘れているのです。いざ、辞任届をもらおうと思っても連絡がつかない、ということはあり得ます。また、離婚はすべて円満に行われるわけではありませんから、いざ離婚の際に「辞任届」を交渉材料に使われる可能性もあります。(印鑑を押すので金額を上げてくれ、というようなものです)

この点、株式会社であれば、取締役には任期がありますので、その任期満了を待つというのもひとつの方法です。一方で、取締役が就任しているのが特例有限会社であれば、取締役には原則任期がないため、任期満了を待つことができないのです。※ただし特例有限会社でも取締役の任期を定めることは可能です。

配偶者(妻・夫)を取締役に加えた場合には、離婚の際に辞任を忘れずに!

離婚協議の際の交渉材料となる点に注意!

まとめ

いかがでしたでしょうか。例え、配偶者(妻・夫)であっても取締役として就任した以上、法律上は他の第三者と同じ取締役に他なりません。当然、義務や権利を持っているのです。取締役に就任させる際には当然、家庭も円満でしょうから取締役を辞めて欲しい時、のイメージはつきにくいでしょう。しかし、実際に現在は3組に1組が離婚しているといわれている社会です。十分にそのリスクがあると理解した上で、取締役に配偶者を就任させるか検討してみてはいかがでしょうか。

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。経営者とその家族まで支援できる企業・事業承継支援を行う。

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