司法書士の植田麻友です。
株式会社は種類株式を発行することができます。近年では、種類株式は事業承継対策としても利用され、多くの中小企業で用いられています。
種類株式の種類について
会社法108条に種類株式についての記載があります。これは組み合わせは自由であり、自由に発行することが可能です。
①剰余金の配当(配当優先株、配当優先株、配当劣後株)
②残余財産の分配
③株主総会の議決権(議決権制限株式)
④株式譲渡(譲渡制限株式)
⑤会社に取得請求(取得請求権付株式)
⑥会社が強制取得(取得条項付株式)
⑦会社が全部取得(全部取得条項付種類株式)
⑧決議に拒否権(拒否権付株式)
⑨役員選任権(種類株主総会で取締役・監査役の選任ができる株式)
議決権制限株式について
その中でもよく用いられるので議決権制限株式となります。これは制限となりますが、一定の場合には、当該株主へ議決権を行使させないために設定することがほとんどです。しかし、すべての議案で議決権を失うことができません。あくまで議決権の制限の株式なのです。
ちなみに、議決権を行使することができないのは、あくまで株主総会に対してであり、種類株主で構成される種類株主総会においては議決権を有していますので注意が必要です。議決権を完全に制限したいのであれば、種類株主総会の議決権についても配慮する必要があるのです。
種類株主総会の決議を不要できる場合
重要となるのは、会社法199条第4項と322条の種類株主総会です。
会社法第199条第4項
4 種類株式発行会社において、第一項第一号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
会社法第238条第4項
種類株式発行会社において、募集新株予約権の目的である株式の種類の全部又は一部が譲渡制限株式であるときは、当該募集新株予約権に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を目的とする募集新株予約権を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
会社法第795条第4項
存続株式会社等が種類株式発行会社である場合において、次の各号に掲げる場合には、吸収合併等は、当該各号に定める種類の株式(譲渡制限株式であって、第百九十九条第四項の定款の定めがないものに限る。)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合は、この限りでない。
一 吸収合併消滅株式会社の株主又は吸収合併消滅持分会社の社員に対して交付する金銭等が吸収合併存続株式会社の株式である場合 第七百四十九条第一項第二号イの種類の株式
二 吸収分割会社に対して交付する金銭等が吸収分割承継株式会社の株式である場合 第七百五十八条第四号イの種類の株式
三 株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等が株式交換完全親株式会社の株式である場合 第七百六十八条第一項第二号イの種類の株式
新株予約権の発行、吸収合併、吸収分割、株式交換で譲渡制限株式を発行・交付する場合も含むことになるため、定款の定めがなければ種類株主総会の決議が必要となります。そのため、種類株主の議決権をできる限り制限するためには、上記会社法に基づき定款を定める必要があるのです。
種類株主総会の決議が不要である旨の定款の定め
会社法に準じて、議決権を制限する定款の定めを置く場合には下記のようになります。
第〇条(種類株主総会)
1.当会社は、会社法第322条第3項ただし書の場合を除き、同条第1項に定める種類株主総会の決議を要しない。
2.当会社は、会社法第199条第4項、第238条第4項、第795条第4項に定める種類株主総会の決議を要しない。
(または、「当会社の株式等の発行・交付の決定においては、一切の種類株主総会の決議を要しない」)
1.2.で分けているのは、1は登記事項であり、2は登記事項でないためです。登記事項でなくても、定款に定める必要があるので注意しましょう。
また上記の定めを置いたとしても、「株式の種類の追加」「株式の内容の変更」「発行可能株式総数の変更または発行可能種類株式総数の増加」については種類株主総会の決議を不要できませんので、ご注意ください。
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司法書士・行政書士/植田麻友
1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。経営者とその家族まで支援できる企業・事業承継支援を行う。 |
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