一般社団法人の重任登記|理事の任期と2年ごとの手続き、放置による解散みなしの注意点

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

一般社団法人を設立された方から、設立から数年たって「理事は誰も変わっていないのに登記が必要だと言われた」というご相談をいただくことがあります。同じ方が引き続き理事を務める場合でも、任期が満了すればいったん退任し、あらためて選任されたものとして登記をしなければなりません。これが重任の登記です。株式会社と比べて任期が短く、放置したときに解散とみなされるまでの期間も短いため、気づかないうちに登記が何期分もたまっていることがあります。本記事では、理事と監事の任期の考え方から、重任登記の手続きの流れ、必要書類と費用、そして登記を怠った場合に何が起きるかまで、堺市で法人登記のご相談を数多くお受けしてきた経験を踏まえて、実務目線で解説します。

第1章 重任登記の基本と株式会社との違い

(1)重任とは何か

重任とは、任期が満了して退任した役員が、同じ社員総会で再び選任され、間を空けずに就任することをいいます。人としては同じ方が続けて理事を務めますが、法律上は一度任期が切れて、新たに選ばれ直したものとして扱われます。

登記簿には、任期満了により退任した旨と、同じ日に就任した旨が記録されます。役員の顔ぶれが変わらないため登記も不要だと考えてしまいがちですが、登記事項に変動が生じている以上、申請が必要です。

登記の申請は、登記の事由が発生した時から二週間以内に行う必要があります。重任の場合、事由が発生した日は定時社員総会の日になります。

(2)株式会社との違い

株式会社では、非公開会社であれば定款で取締役の任期を十年まで伸ばすことができます。設立時に十年としている会社も多く、その場合は十年に一度の登記で足ります。

これに対し、一般社団法人の理事の任期は伸ばすことができません。定款で短縮することはできても、伸長する仕組みがないため、少なくとも二年に一度は登記の場面が訪れます。この違いを知らないまま株式会社と同じ感覚で運営していると、登記漏れが積み重なりやすくなります。

もう一つの大きな違いが、解散とみなされるまでの期間です。株式会社は最後の登記から十二年ですが、一般社団法人と一般財団法人は五年とされています。任期が二年で解散みなしが五年ですので、二期分の登記を飛ばすと、その射程に入ってしまう計算になります。

① 登記を怠ると過料の対象になります

役員の変更の登記を期間内に申請しなかった場合、代表者個人に対して百万円以下の過料が科される可能性があります。会社に対する制裁ではなく、代表者個人あてに裁判所から通知が届く形になります。

過料の額は、登記を怠っていた期間の長さなどを踏まえて決まるとされています。何期分もまとめて登記を申請した場合、その事実は登記簿の記録から明らかになりますので、気づいた時点で早めに手続きを進めることが結果的に負担を軽くします。

Q. 理事が一人も入れ替わっていなくても、本当に登記が必要ですか?

A. 必要です。任期の満了によって理事はいったん退任していますので、同じ方が続けて就任する場合でも、退任と就任の両方を登記します。法務省も、再任の場合であっても役員変更の登記が必要である旨を案内しています。なお、登記が必要なのは任期が満了した場合ですので、任期の途中であれば登記の場面は生じません。まずは定款で任期がどう定められているかを確認し、直近の定時社員総会がいつだったかと照らし合わせてみることをおすすめします。

第2章 理事と監事の任期の考え方

(1)理事の任期

理事の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとされています。「二年ちょうど」ではなく、事業年度と定時社員総会を基準に区切られる点が特徴です。

たとえば、三月末を事業年度末とする法人で、令和六年五月の定時社員総会で選任された理事であれば、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものは令和八年三月期です。したがって、任期は令和八年五月ごろに開かれる定時社員総会の終結の時までとなります。

(2)監事の任期

監事の任期は、選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとされています。理事より長く設定されているのは、監査する立場の独立性を確保するためです。

ただし、定款によって、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとすることを限度として短縮することができます。理事と監事の改選時期をそろえたいという理由から、定款で監事の任期を二年としている法人も少なくありません。

(3)定款で短縮している場合

理事の任期は、定款または社員総会の決議によって短縮することができます。実際の定款には「理事の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までとする」と書かれていることが多いのですが、法人によっては一年としている例もあります。

登記の場面で意外に問題になるのが、定款の記載と実際の運用がずれているケースです。定款上は一年なのに二年に一度しか改選していない、という状態は、任期が切れたまま理事が在任していることを意味します。定款は設立時のまま置かれていることが多いので、一度開いて確認しておくとよいでしょう。

(4)事業年度と定時社員総会の関係

任期は事業年度を基準に決まりますので、事業年度を変更すると任期の満了時期も動きます。定款変更で事業年度を変えた場合には、あわせて役員の任期がいつ満了するのかを計算し直しておく必要があります。

① 理事と監事の任期の比較

法律上の原則と、定款で変えられる範囲を整理すると、次のようになります。

役職 法律上の任期 定款による変更
理事 選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで 短縮できる(伸長はできない)
監事 選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで 二年以内に終了する事業年度を限度として短縮できる

第3章 重任登記の手続きの流れ

(1)定款と登記簿で任期の満了時期を確認する

最初に行うのは、定款に定められた理事と監事の任期を確認し、登記簿に記録されている就任の年月日と照らし合わせる作業です。登記簿には理事の就任年月日が記録されていますので、そこから任期の満了時期を計算できます。

代表理事を置いている法人では、代表理事の任期にも注意が必要です。代表理事は理事の中から選ばれますので、理事としての任期が満了すれば、代表理事としての地位も失われます。

(2)定時社員総会を開いて理事を選任する

任期の満了する定時社員総会で、あらためて理事を選任します。議案としては役員の選任として扱い、被選任者ごとに賛否を諮ります。同じ方が続けて選ばれる場合でも、選任の決議は必要です。

議事録には、任期満了により退任する旨と、新たに選任された旨の両方を記載します。ここが曖昧だと、登記の原因が「重任」であることを証明できません。

(3)代表理事を選定する

理事会を設置している法人では、社員総会の後に理事会を開いて代表理事を選定します。理事会を設置していない法人では、定款の定めに従い、理事の互選や社員総会の決議によって代表理事を定めます。

社員総会と理事会を同じ日に続けて開催するのが一般的です。日を分けると、その間は代表理事が不在の状態が生じますので、招集の段階から同日開催を前提に組み立てておくとよいでしょう。

(4)添付書面をそろえて申請する

申請先は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局です。窓口、郵送、オンラインのいずれでも申請できます。定時社員総会の日から二週間以内が申請の期限ですので、総会の日程が決まった段階で、必要書類の準備に取りかかることになります。

① スケジュールの目安

事業年度末が三月であれば、五月下旬から六月にかけて定時社員総会を開く法人が多くなります。この場合、四月中に定款と登記簿で任期を確認し、五月上旬に総会の招集通知を発し、総会当日に理事会まで済ませて、六月上旬に登記を申請するという流れになります。

決算の承認と役員の改選が同じ総会で行われますので、決算作業と並行して登記の準備を進めることになります。役員の改選がある年かどうかを年度の初めに確認しておくと、直前に慌てずに済みます。

Q. 定時社員総会を開かないまま数年が過ぎてしまいました。今から登記できますか?

A. さかのぼって手続きを整えることになります。実務上は、まず本来開催すべきであった各年度の社員総会を実際に開催し、それぞれの年度について決算の承認と役員の選任を行ったうえで、複数回分の登記をまとめて申請する方法がとられます。登記の原因は各回の総会の日付になりますので、議事録も回数分必要です。過料の対象にはなり得ますが、放置して解散とみなされる事態を避けることの方が重要です。何期分がたまっているかによって進め方が変わりますので、早めに整理に着手されることをおすすめします。

第4章 添付書面と費用

(1)社員総会議事録と理事会議事録

重任の登記に必要となる主な書面は、理事を選任した社員総会の議事録と、代表理事を選定した理事会の議事録です。理事会を設置していない法人では、理事の互選書が理事会議事録に代わります。

定款の定めが登記簿の記録から読み取れない場合には、定款の添付を求められることがあります。任期を法律上の原則と異なる期間に定めている法人では、定款を用意しておくと手続きが滞りません。

(2)就任承諾書

選任された理事および監事について、就任を承諾したことを示す書面が必要です。被選任者がその場に出席して就任を承諾し、その旨が議事録に記載されている場合には、別途の就任承諾書を省略できる取り扱いがあります。

代表理事が新たに就任する場合には、就任承諾書に押した印鑑についての印鑑証明書の添付を求められます。同じ方が引き続き代表理事となる重任の場合の取り扱いは、選定の方法によって異なりますので、申請の前に確認しておくと安心です。

(3)本人確認証明書

新たに就任する理事や監事については、印鑑証明書を添付しない場合、住民票記載事項証明書や運転免許証のコピーなどの本人確認証明書を添付します。重任のように再任にあたる場合には、本人確認証明書は不要とされています。

外部から新しい理事を迎えた年は本人確認証明書が必要になり、全員が再任の年は不要になる、という形で、年によって必要書類が変わります。改選のたびに前回と同じ書類をそろえればよいわけではない点に注意が必要です。

① 費用の目安

理事三名と監事一名の全員が重任し、代表理事も同じ方が続けて選定される法人が、単独で登記を申請する場合の実費の目安は次のとおりです。

項目 金額
登録免許税(一般社団法人の役員変更) 10,000円
印鑑証明書(必要となる場合、一通あたり) 300円程度
登記事項証明書(登記完了後の確認用、一通) 600円

上記はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は取得する証明書の通数や市区町村の手数料の定めによって変動します。なお、複数年分の登記をまとめて申請する場合、登録免許税は登記の件数に応じて必要になります。

第5章 重任登記でよくある失敗事例とリスク回避のポイント

(1)役員が変わっていないため登記不要と考えていた事例

設立から六年が経過した一般社団法人で、理事三名の顔ぶれは設立時から変わっていませんでした。役員に変動がないのだから登記も不要だと考え、設立登記以降、一度も登記を申請していませんでした。

補助金の申請にあたって登記事項証明書を提出したところ、交付機関から役員の登記が古いままである旨の指摘を受け、初めて重任登記の必要を知ることになりました。結果として三期分の社員総会を開き直し、三件分の登記を申請しています。登録免許税も件数分が必要になり、当初の想定より費用がかさみました。

(2)みなし解散の通知が届いた事例

最後の登記から五年以上が経過していた法人に、法務局から通知が届きました。一般社団法人については、最後の登記から五年を経過すると、公告と通知を経て解散したものとみなされる制度があります。

この法人では、通知に対して事業を廃止していない旨の届出を期限内に提出し、あわせて滞っていた役員変更の登記を申請することで、解散とみなされる事態は避けられました。ただ、通知が届いてから対応するまでの期間は限られており、書類の準備にかなりの負担がかかっています。通知は登記簿上の主たる事務所あてに送られますので、事務所の実態がない住所を登記したままにしていると、通知に気づかないまま解散とみなされる危険があります。

(3)定款の任期と実際の運用がずれていた事例

定款では理事の任期を一年と定めていたにもかかわらず、二年に一度しか改選していなかった法人がありました。登記簿上は二年ごとの重任が記録されていましたが、定款に照らすと、間の一年は任期が満了した理事が在任している状態でした。

この法人では、定款を実態に合わせて二年に変更する決議を行ったうえで、以後の運用を整えています。定款を変えるのか、運用を定款に合わせるのか、どちらを選ぶかで手続きが変わりますので、ずれに気づいた時点で方針を決めておくことが大切です。

① 毎年確認しておきたいチェックポイント

年度の初めに次の点を確認しておくと、登記漏れが起きにくくなります。定款上の理事と監事の任期、登記簿に記録された就任年月日、今年度の定時社員総会が改選の年にあたるか、登記簿上の主たる事務所に通知が届く状態か、そして最後に登記をしたのはいつか。この五点を一覧にしておけば、改選の年を見落とすことはほとんどなくなります。

Q. 理事の一人が任期の途中で辞任しました。このときも登記が必要ですか?

A. 必要です。任期の途中であっても、理事が辞任すれば登記事項に変動が生じますので、二週間以内に変更の登記を申請します。あわせて確認しておきたいのが、定款で定めた理事の員数を下回っていないかという点です。員数を割り込む場合には、後任の理事を選任する社員総会を開く必要があり、後任者が就任するまでの間、辞任した理事が引き続き理事としての権利義務を有することになります。辞任の申出を受けた段階で、定款の員数の定めを確認しておくとよいでしょう。

一般社団法人の重任登記は、役員の顔ぶれが変わらないからこそ忘れられやすく、気づいたときには何期分もたまっているという事態が起こりやすい手続きです。理事の任期は伸ばすことができず、最後の登記から五年で解散とみなされる制度もありますので、二年に一度は必ず登記の場面が来るものとして年度の予定に組み込んでおくことが、いちばん確実な備えになります。定款と登記簿を並べて任期を確認する作業は一度きりで済み、その後は同じ周期を繰り返すだけです。任期の計算や、滞ってしまった登記の整理に不安がある場合は、早い段階で専門家に相談し、無理のない形で立て直すことをおすすめします。

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司法書士・行政書士/植田麻友

 

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。

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