株式会社と合同会社のメリット・デメリット|設立後の維持コストと後から形態を変える方法

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

これから会社を作ろうとするとき、最初に決めなければならないのが、株式会社にするか合同会社にするかという点です。設立費用だけを並べると合同会社のほうが安く済むため、そこで決めてしまう方も少なくありません。ただ、実際にご相談をお受けしていると、後から効いてくるのは設立時の十数万円の差ではなく、設立した後に毎年・数年ごとに発生する手続きの差であることがほとんどです。本記事では、両者の基本的な違いから、設立費用の内訳、設立後に必要になる手続きの差、資金調達や相続の場面で表れる違い、そして会社形態の選択でつまずいた失敗事例まで、堺市で法人設立のご相談を数多くお受けしてきた経験を踏まえて、実務目線で解説します。

第1章 株式会社と合同会社の基本と違い

(1)株式会社とはどのような会社か

株式会社は、出資する人と経営する人が制度上分かれている会社形態です。出資した人は株主となり、株主総会で議決権を行使して取締役を選びます。選ばれた取締役が日々の業務を行い、その結果を株主に報告するという仕組みになっています。

一人で設立する場合は、その人が株主であり取締役でもあるため、この分離を実感する場面はほとんどありません。しかし制度としては分かれているため、後から出資者だけを増やしたり、経営を任せる人だけを入れ替えたりすることができます。この柔軟さが株式会社の一番の特徴です。

(2)合同会社とはどのような会社か

合同会社は、株式を発行しない会社形態である持分会社の一つです。出資した人はそのまま社員となります。ここでいう社員は従業員のことではなく、出資者であり経営者でもある立場を指す会社法上の言葉です。原則として社員全員が業務を執行し、会社を代表します。

出資と経営が一体になっているため、意思決定に株主総会のような手続きを挟む必要がありません。その一方で、出資だけしてもらって経営には関与しないという形を作りにくく、人を増やすときの手続きが重くなります。

(3)意思決定の仕組みの違い

株式会社では、通常の事項は株主総会の普通決議、定款変更などの重要な事項は特別決議で決まります。いずれも持株数に応じた多数決であり、出資者全員の賛成までは求められません。

合同会社では、定款を変更する場合、原則として社員全員の同意が必要です。出資額の大小に関係なく頭数での全員一致になるため、社員が複数いる合同会社では、一人でも反対すると増資も本店移転も進まないという事態が起こり得ます。定款で別段の定めを置くこと自体は可能ですが、実際には全員同意のままにしている会社が多いです。

Q. 一人で起業するなら、どちらを選んでも実務上の違いはありませんか?

A. 設立した直後の日常業務については、ほとんど違いは出ません。差が表れるのは、出資者や役員を増やす場面と、代表者に万一のことがあった場合です。株式会社は株式を譲渡したり新たに発行したりすることで出資者を受け入れられますが、合同会社で社員を加えるには原則として社員全員の同意と定款変更が必要になります。将来的に共同経営者や出資者を迎える可能性があるかどうかを、設立前に一度考えておくとよいでしょう。

① 取引先や参入市場によって選択肢が絞られる場合

会社形態そのものを理由に許認可が下りないという場面は多くありませんが、新規取引先の登録基準や入札への参加資格の要件として、株式会社であることを求めている企業・団体もあります。主要な取引先や参入を予定している市場がすでに決まっている場合は、設立前にその要件を確認しておくと、後から組織変更をする手間を避けられます。

② 出資者が一人かどうかで判断が変わる点

社員が一人だけの合同会社であれば、全員同意といっても自分一人の判断で足りるため、意思決定の重さは問題になりません。合同会社の使い勝手が落ちるのは、社員が二人以上になったときです。共同で出資して始めるのであれば、この点は設立前に確認しておきたいところです。

第2章 設立にかかる費用の比較

(1)株式会社の設立費用

株式会社を設立する場合、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。認証手数料は資本金の額によって変わり、100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、それ以上で5万円です。さらに2024年12月1日からは、資本金100万円未満であることに加えて、発起人が3人以下の自然人のみであること、発起人が設立時に発行する株式の全部を引き受ける旨が定款に記載されていること、取締役会を置く旨の記載がないことのすべてを満たす場合、認証手数料が1万5,000円に引き下げられています。

登記の際には登録免許税がかかります。株式会社は資本金の額の0.7%で、その額が15万円に満たない場合は15万円です。資本金が2,100万円程度までは一律15万円になると考えておくとよいでしょう。

(2)合同会社の設立費用

合同会社には定款認証の手続きがありません。公証役場に出向く必要がなく、認証手数料もかかりません。登録免許税は資本金の額の0.7%で、6万円に満たない場合は6万円です。

なお、定款を紙で作成した場合は、株式会社・合同会社のいずれも原本に4万円の収入印紙を貼る必要があります。電子定款で作成すればこの印紙は不要になるため、費用を抑えたい場合は電子定款を選ぶことになります。

① 資本金300万円で設立する場合の費用比較

資本金300万円、電子定款で設立するケースについて、設立登記までに必要な公的な費用を並べると、以下のようになります。

項目 株式会社 合同会社
定款認証手数料 50,000円 不要(0円)
定款の収入印紙(電子定款のため) 0円 0円
登録免許税 150,000円 60,000円
登記事項証明書・印鑑証明書などの実費 数千円程度 数千円程度
合計の目安 20万円程度 6万円程度

上記はあくまで一般的な目安であり、実際の費用は資本金の額や定款の作成方法によって変動します。

② 費用差だけで決めると後で困ること

この例では設立時の差は14万円程度です。金額として小さくはありませんが、一度きりの費用です。次章で見るとおり、設立後の手続きの差は数年ごとに繰り返し発生するため、事業を10年続ける前提で考えるのであれば、設立時の金額差だけで判断すると全体像を見誤ることがあります。

第3章 設立後に発生する手続きの違い(実務ステップ)

(1)役員の任期と重任登記

株式会社の取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。株式の譲渡に会社の承認が必要な会社であれば、定款で最長10年まで伸ばすことができます。任期が満了すると、同じ人が続けて務める場合でも重任の登記が必要で、登録免許税は資本金の額が1億円以下の会社で1万円です。

合同会社の業務執行社員には、任期の定めがありません。社員の交代や住所の変更がなければ、何年経っても登記をする場面が出てこないことになります。

(2)決算公告

株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければならないと定められています。官報に掲載する方法、日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告のいずれかを定款で定めることになります。

合同会社には、この決算公告の義務がありません。規模の小さい会社ほど、この差が毎年の手間と費用として表れます。

(3)変更登記の期限と過料

会社の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければなりません。これは株式会社でも合同会社でも同じです。登記を怠った場合、申請を怠った代表者等は裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。

株式会社には任期満了による重任という定期的な登記事由があるため、この期限を意識する場面が繰り返し訪れます。一方で合同会社は登記事由そのものが少ないため、本店移転や商号変更が起きたときに期限を見落としやすい面があります。

(4)みなし解散

最後の登記から12年を経過した株式会社は、休眠会社として毎年の整理作業の対象になります。10月頃に法務大臣による官報公告が行われ、対象の会社には登記所から通知書が送られます。公告から2か月以内に必要な登記か「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないと、実際には営業を続けていても解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記がされます。

この整理作業の対象は株式会社であり、合同会社は含まれません。取締役の任期を10年としている株式会社は、重任登記を続けて忘れると12年に届いてしまうため、特に注意が必要です。なお、みなし解散の登記がされた後でも、3年以内であれば株主総会の特別決議によって会社を継続することができます。

① 設立から10年間で発生する登記手続きの目安

株式会社で取締役の任期を2年としている場合、10年の間に重任の登記が4回発生します。任期を10年にしていれば1回で済みますが、その分だけ登記の存在を忘れやすくなります。合同会社では、社員や本店に変更がなければ登記の機会そのものがありません。株式会社を選ぶ場合は、任期を何年にするかを設立時に決めることが、その後10年間の手間と費用を左右します。

Q. 取締役の任期は長くしておいたほうが得ですか?

A. 登記の回数と費用だけを考えれば、任期を10年にしたほうが負担は軽くなります。ただし、任期の途中で取締役に辞めてもらいたい場合、正当な理由なく解任すると会社が損害賠償を求められることがあり、残っている任期が長いほど請求される金額も大きくなりやすい点に注意が必要です。家族や共同経営者を取締役に入れる予定がある場合は、任期を2年から5年程度にとどめておくほうが安全なこともあります。

第4章 資金調達・相続・会社形態の変更

(1)出資者を増やす場面の違い

株式会社が増資をする場合は、募集株式の発行の手続きを取ります。株主総会の決議によって進めることができ、出資した人は株主として加わります。議決権のない株式を発行して、経営権を渡さずに資金だけを受け入れるといった設計も可能です。

合同会社が新たに社員を加える場合は、出資の受け入れとあわせて定款の変更が必要になり、原則として社員全員の同意を得ることになります。出資者を増やすこと自体はできますが、その人は原則として業務執行にも関わる立場になります。外部からの出資を予定している場合、この違いは大きく効いてきます。

(2)代表者に相続が発生した場合

株式会社の株主が亡くなった場合、その株式は相続財産として相続人に承継されます。会社はそのまま存続し、相続人が株主として議決権を持つことになります。

合同会社では扱いが逆になります。社員の死亡は法律上の退社事由とされているため、定款に何も定めがなければ、その社員は退社し、相続人は持分の払戻しを受けるだけで社員にはなりません。社員が一人しかいない合同会社でこれが起きると、社員が欠けたことによって会社は解散に向かうことになります。定款に、社員が死亡した場合にその相続人が持分を承継する旨を定めておけば相続人が社員となることができるため、合同会社を選ぶのであれば、この条項を入れるかどうかは設立時に必ず検討しておきたい点です。

(3)合同会社から株式会社へ変更する方法

まず合同会社で組織変更計画を作成し、総社員の同意を得ます。あわせて債権者保護のための手続として官報に公告し、把握している債権者には個別に催告します。この手続には一定の期間を置く必要があるため、変更したい日から逆算して準備を始めることになります。効力が発生する日に、株式会社の設立の登記と合同会社の解散の登記を同時に申請します。

(4)変更にかかる費用

組織変更による株式会社の設立の登記の登録免許税は、資本金の額の0.15%で、3万円に満たない場合は3万円です。これに加えて、合同会社の解散の登記に3万円がかかります。このほか、官報に公告を掲載するための費用が別途必要です。

設立時に合同会社を選んで費用を抑えても、数年後に株式会社へ変更するとなれば、この費用と手続きの期間が改めて発生します。将来的に株式会社にする可能性が高いのであれば、最初から株式会社で設立するほうが、結果として負担が軽くなることが多いです。

第5章 会社形態の選択でつまずいた事例とリスク回避のポイント

(1)合同会社にしたところ取引先の登録で止まった事例

小売業を始めた方が合同会社で設立し、売上が伸びてきた段階で大手の卸との取引を希望したものの、先方の新規取引先登録の基準が株式会社に限られていたというケースがあります。取引を始めるために組織変更をすることになりましたが、官報公告の期間を含めて1か月以上を要したため、先方の仕入計画のタイミングに間に合わず、その期の取引は見送りになりました。参入したい市場が決まっている場合は、その業界の慣行を先に確認しておくと、こうした足踏みを避けられます。

(2)任期を10年にして重任を忘れ、みなし解散の通知が届いた事例

設立時に登記の手間を減らそうと取締役の任期を10年にした株式会社で、10年目の重任登記を失念したまま数年が過ぎ、法務局から休眠会社の通知書が届いたというケースがあります。届出をしたことで解散は免れましたが、その後に重任の登記をした際、登記を怠っていた期間について裁判所から過料の通知が届きました。任期を長くする場合は、任期が満了する年を決算月とあわせて手帳に書き込み、顧問の会計事務所とも共有しておくと安心です。

(3)合同会社の社員が亡くなり、資金繰りに影響が出た事例

夫婦二人で合同会社を設立し、定款には相続に関する定めを置いていなかったところ、代表社員が急逝したというケースがあります。配偶者がもう一人の社員として残っていたため会社自体は存続しましたが、亡くなった方の持分は相続人への払戻しの対象となりました。相続人が複数いたため、払戻額の算定と支払方法の話し合いに時間がかかり、その間の資金繰りにも影響が出ています。合同会社を選ぶ場合、持分の承継に関する定款の定めは、設立時に検討しておきたいところです。

① 会社形態を決める前のチェックポイント

出資者は自分一人か、複数か。将来的に外部から出資を受ける可能性があるか。主要な取引先や参入予定の市場が会社形態を要件にしていないか。代表者に万一のことがあった場合に、誰が事業を引き継ぐか。この4点を設立前に整理しておくと、費用の比較だけでは見えない部分まで含めて判断することができます。

Q. 合同会社で設立した後に株式会社へ変更した場合、それまでの実績はそのまま引き継げますか?

A. 組織変更は会社を作り直す手続きではなく、同じ法人格のまま形態を変える手続きです。そのため、会社の設立年月日や取引の実績、多くの許認可はそのまま引き継がれます。ただし、許認可の中には変更の届出が必要になるものがあり、金融機関の口座や継続中の契約についても商号の変更にあわせた手続きが必要です。登記が完了すれば自動的にすべてが切り替わるわけではないため、関係先への届出を一覧にしてから進めることをおすすめします。

株式会社と合同会社のどちらを選ぶかは、設立時の費用の差ではなく、その会社を何年続けるつもりで、誰と一緒に育てていくのかという見通しによって決まります。出資者の顔ぶれと将来の資金調達、そして万一のときの引き継ぎまで見据えて選んでおけば、会社形態は事業を支える土台として長く機能してくれます。どちらにすべきか判断がつかない場合は、設立の準備を始める早い段階で専門家に相談し、後から作り直さずに済む形を選んでおくことをおすすめします。

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司法書士・行政書士/植田麻友

 

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。

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