法務局の管轄のご案内|不動産登記と商業登記で違う管轄と、証明書をどこで取れるか

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

登記の手続きを自分で進めようとしたとき、最初につまずきやすいのが「どこの法務局に出せばよいのか」という点です。最寄りの法務局に持ち込めばよいと考えて出向いたところ、管轄が違うので受け付けられないと言われて出直しになる、というのは決して珍しい話ではありません。やっかいなのは、不動産登記と商業登記とで管轄の決まり方が異なり、しかも同じ法務局でも扱う範囲が違うことです。さらに、申請の管轄と、証明書を取得できる場所とは、まったく別のルールで動いています。本記事では、不動産登記と商業登記それぞれの管轄の決まり方、証明書をどこで取得できるか、管轄をまたぐ手続きの進め方、そして実務でよくある取り違えの事例まで、堺市で登記のご相談を数多くお受けしてきた経験を踏まえて、実務目線で解説します。

第1章 管轄とはどういう仕組みか

(1)登記は管轄する登記所でしか受け付けられない

登記の事務は、全国の法務局・地方法務局と、その支局・出張所が分担して取り扱っています。この分担の範囲が管轄です。ある不動産や会社の登記は、それを担当する登記所が1つ決まっており、そこ以外の登記所に申請書を提出しても手続きは進みません。

登記所の窓口は、管轄外の申請書を親切に転送してくれるわけではありません。オンライン申請でも同じで、申請先の登記所を誤って選択すれば、そこで手続きは止まります。書類をそろえる労力に比べれば、管轄の確認そのものは数分で済みますので、準備の最初に確定させておきたいところです。

(2)不動産登記と商業登記で決まり方が違う

不動産登記の事務は、その不動産の所在地を管轄する登記所が取り扱います。土地や建物がどこにあるかで決まる、という分かりやすい基準です。

これに対して商業・法人登記は、会社の本店所在地を管轄する登記所が取り扱います。基準そのものは似ていますが、問題はその管轄区域の広さです。近年、商業・法人登記の事務は各地で集約が進んでおり、不動産登記を扱う登記所の数よりもずっと少ない登記所に集められています。そのため、同じ市内にある不動産と会社であっても、申請先の登記所が違う、ということが普通に起こります。

Q. 管轄を間違えて申請書を提出してしまった場合、そのまま正しい登記所へ回してもらえますか?

A. 原則として、管轄外の登記所に提出された申請は受け付けられず、こちらで取り下げたうえで正しい登記所に出し直すことになります。例外的に、一つの建物が二以上の登記所の管轄区域にまたがっていて、どの登記所が担当するかの指定を受けている場合には、指定された登記所以外に提出された申請書は却下されずに移送されるべきものとされています。ただしこれは管轄の指定という特殊な場面での取扱いであり、単純な取り違えには当てはまりません。提出前の確認が確実です。

① 堺支局の管轄が分かりやすい例です

大阪法務局堺支局の場合、不動産登記の管轄区域は堺市、松原市、高石市、大阪狭山市の4市です。ところが商業・法人登記の管轄区域は、この4市に加えて、富田林市、河内長野市、羽曳野市、藤井寺市、南河内郡、さらに岸和田市、泉大津市、貝塚市、泉佐野市、和泉市、泉南市、阪南市、泉北郡忠岡町、泉南郡までを含みます。富田林支局と岸和田支局は、商業・法人登記については各種証明書の交付事務のみを取り扱っており、登記の申請は堺支局が引き受けているためです。岸和田市に本店を置く会社の役員変更登記は堺支局へ、岸和田市にある土地の相続登記は岸和田支局へ、というように申請先が分かれます。

第2章 不動産登記の管轄

(1)不動産の所在地で決まります

不動産登記の申請先は、対象となる土地や建物の所在地を管轄する登記所です。所有者がどこに住んでいるかは関係ありません。堺市に住んでいる方が和歌山県の山林を相続した場合、その相続登記は和歌山の登記所に申請することになります。

所在地は住所表示ではなく、登記簿上の所在と地番で判断します。住居表示が実施されている地域では、普段使っている住所と地番が一致しないため、権利証や固定資産税の課税明細書で地番を確認しておく必要があります。

(2)建物が二以上の管轄にまたがる場合

敷地が市の境界をまたいでいて、建物が二以上の登記所の管轄区域にまたがることがあります。この場合は、法務大臣または法務局長・地方法務局長が、その登記事務を取り扱う登記所を指定することとされています。指定がされるまでの間は、またがっている登記所のうちいずれか一つに申請することができます。

こうした物件は数としては多くありませんが、該当しそうな場合は、先に登記所へ問い合わせておくと確実です。

(3)複数の不動産が別々の管轄にある場合

相続の場面でよくあるのが、自宅は堺市、収益物件は大阪市、先祖代々の田は他府県、というように不動産が散らばっているケースです。この場合、1通の申請書でまとめて申請することはできず、管轄ごとに申請書を分けて、それぞれの登記所に提出することになります。

戸籍や遺産分割協議書といった添付書類は、原本還付の手続きをとることで使い回すことができます。ただし、一つの管轄での登記が完了して原本が戻ってくるのを待ってから次に出す、という進め方をすると、管轄の数だけ期間が積み上がります。同時並行で進めるか、法定相続情報一覧図を必要な通数だけ交付してもらう方法をとると、期間を短縮できます。

① 申請先を確定させるまでの手順

まず固定資産税の課税明細書などで対象不動産の所在と地番を洗い出します。次に、その所在地がどの登記所の管轄かを法務局のホームページの管轄一覧で確認します。最後に、管轄ごとに不動産をグループ分けし、グループの数だけ申請書を作る、という順序です。この整理を先に済ませておくと、必要な登記事項証明書の通数や登録免許税の見積もりも同時に固まります。

第3章 商業・法人登記の管轄

(1)本店所在地で決まります

会社の登記の申請先は、本店所在地を管轄する登記所です。役員変更、目的変更、増資、解散といった登記は、すべてこの登記所に対して行います。支店を各地に置いていても、申請先は本店の管轄です。

設立の場面では、本店をどこに置くかを決めた時点で申請先も決まります。堺市に本店を置くのであれば、申請先は堺支局です。

(2)管轄外へ本店を移転する場合

本店を現在の管轄区域の外へ移転すると、旧本店を管轄する登記所と、新本店を管轄する登記所の両方に登記が必要になります。このとき、二つの登記所にそれぞれ持ち込むのではなく、旧本店の管轄登記所を経由して、二通の申請書を同時に提出します。旧管轄で処理された後、新管轄へ書類が送られる仕組みです。

本店移転の登録免許税は1箇所につき3万円と定められています。管轄外への移転では、旧本店の管轄登記所宛ての申請書と新本店の管轄登記所宛ての申請書のそれぞれに3万円ずつ、合計6万円が必要です。同じ管轄区域内での移転であれば1箇所分で済みますので、移転先の候補が管轄の境界付近にある場合は、費用にも差が出ることになります。

(3)印鑑カードと印鑑証明書の空白期間

管轄外への本店移転で見落とされやすいのが、印鑑カードの扱いです。印鑑カードは登記所ごとに発行されるため、管轄が変われば従来のカードは使えなくなり、新しい管轄の登記所で改めて発行を受けることになります。新管轄での登記が完了して印鑑カードが発行されるまでの間は、会社の印鑑証明書を取得できない期間が生じます。

金融機関の手続きや契約の締結で印鑑証明書が必要になる予定がある場合は、移転の登記を申請する前に必要通数を取得しておくとよいでしょう。

Q. 本店を移転する予定ですが、同じ時期に役員変更の登記もあります。まとめて申請できますか?

A. 同一の管轄区域内での移転であれば、本店移転と役員変更を同じ登記所への申請として処理することができます。管轄外への移転の場合は、経由申請という特殊な流れになるため、役員変更をどちらの時点で行うかによって申請先が変わります。移転の登記が完了する前に役員の変更が生じたのであれば旧管轄へ、完了後であれば新管轄へ申請することになります。登記の効力が生じた日付と移転日の前後関係で判断が分かれますので、日程を決める前に整理しておくことをおすすめします。

第4章 証明書をどこで取れるかは、管轄とは別の話です

(1)登記事項証明書は全国どこの登記所でも請求できます

申請の管轄は厳格ですが、証明書の取得は違います。不動産の登記事項証明書は、その不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所に対しても交付を請求することができます。会社・法人の登記事項証明書も同様で、対象の会社がどこの登記所の管轄であっても、すべての登記所に対して請求することができます。

堺東の窓口で、東京都内の会社の登記事項証明書を取ることも、北海道の土地の登記事項証明書を取ることもできる、ということです。

(2)会社の印鑑証明書も全国どこでも取れます

会社代表者の印鑑証明書についても、管轄にかかわらずすべての登記所に対して請求することができます。ただし請求には印鑑カードが必要ですので、カードを事務所に置いたまま出先の登記所へ向かうと取得できません。

(3)登記事項要約書だけは管轄の登記所に限られます

ここが実務で見落とされやすい点です。登記事項要約書は、請求する不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記官に対して請求することができません。また、登記事項証明書と違って、郵送で送ってもらうこともできません。要約書は手数料が抑えられているぶん、取得できる場所が限られています。遠方の不動産の内容を確認したいだけであれば、登記情報提供サービスを利用するか、登記事項証明書を請求する方が結果的に手間がかかりません。

(4)手数料の一覧

証明書の手数料は請求の方法によって変わります。令和7年4月1日以降の主なものは次のとおりです。

種類と請求方法 手数料
登記事項証明書(窓口・郵送での書面請求) 1通600円
登記事項証明書(オンライン請求・郵送で受取) 1通520円
登記事項証明書(オンライン請求・窓口受取) 1通490円
印鑑証明書(窓口・郵送での書面請求) 1件500円
印鑑証明書(オンライン請求・郵送で受取) 1件450円
印鑑証明書(オンライン請求・窓口受取) 1件420円

上記は一般的な目安であり、証明書の枚数が多い場合には加算があります。通数がまとまるときほど、オンライン請求との差額は大きくなります。

第5章 管轄の取り違えでよくある失敗と回避のポイント

(1)会社と不動産で申請先が違うことに気づかなかった事例

岸和田市に本店を置く会社が、同じ岸和田市内の事業用不動産を購入したケースです。所有権移転登記の書類と、あわせて必要になった会社の目的変更登記の書類を、まとめて岸和田支局に持ち込まれました。ところが商業・法人登記の申請は堺支局の管轄で、岸和田支局では証明書の交付しか取り扱っていません。目的変更登記だけを堺支局へ出し直すことになり、取引先へ提出する予定だった登記事項証明書の準備が1週間遅れました。同じ市内であっても、不動産と会社では申請先が別だという点は、意識しておく必要があります。

(2)遺言書の保管所を最寄りで選べると思っていた事例

法務局の自筆証書遺言書保管制度は、登記とはまた別の管轄の考え方をとっています。保管の申請ができるのは、遺言者の住所地、本籍地、または遺言者が所有する不動産の所在地のいずれかを担当する遺言書保管所です。最寄りの法務局ならどこでもよいというわけではありません。さらに、2通目以降を追加で預ける場合も同じ保管所に申請しなければならず、原本の閲覧や保管の申請の撤回も、その保管所でしか行えません。転居の予定がある方が、勤務先に近いという理由だけで保管所を選んでしまい、後になって撤回のために遠方まで出向くことになった、という例があります。

(3)成年後見の登記を最寄りの法務局に問い合わせた事例

成年後見に関する登記は、不動産や商業の登記とは異なり、東京法務局の後見登録課が取り扱っています。相続の手続きの中で、相続人の一人に後見人が付いているかどうかを確認しようとして、地元の法務局に問い合わせたところ取り扱いがないと案内され、手続きが数日止まったケースがあります。窓口での取扱いは法務局によって異なることがありますので、証明書が必要になる見込みがある場合は、早めに請求先を確認しておくと安心です。

① 申請前に確認しておきたいこと

登記の準備に入る前に、対象は不動産か会社か、その所在地または本店所在地はどこか、その所在地を管轄する登記所はどこか、この3点を紙に書き出して確定させておくことをおすすめします。あわせて、必要な証明書を先に取得しておくのか、登記の完了後に取得するのかも決めておくと、窓口へ足を運ぶ回数を減らせます。管轄一覧は法務局のホームページで公表されており、市区町村名から調べることができます。

Q. 本店を移転したら、不動産の登記の管轄も変わりますか?

A. 変わりません。不動産登記の管轄は不動産の所在地で決まりますので、会社が本店を移転しても、会社が所有する不動産の登記の申請先はそのままです。移転にともなって必要になるのは、不動産の登記名義人である会社の住所を現況に合わせる変更登記です。なお、会社法人等番号が登記されている法人については、本店移転の情報をもとに登記官が職権で住所の変更登記をする取扱いが導入されていますので、対象になるかどうかを確認しておくとよいでしょう。

管轄は、登記の内容そのものではなく手続きの入口にあたる部分ですが、ここを取り違えると、どれだけ書類を丁寧にそろえていても前に進みません。不動産は所在地、会社は本店所在地という原則を押さえたうえで、商業・法人登記では管轄区域が広く集約されていること、そして証明書の取得は管轄に縛られないことを知っておけば、無駄な移動や出直しはほとんど防げます。管轄を先に確定させてから書類の準備に入るという順番を習慣にしておくと、登記の手続き全体が驚くほど滑らかになります。複数の管轄にまたがる不動産をお持ちの場合や、管轄外への本店移転を予定している場合など、進め方に迷うことがあれば、早めに専門家に相談し、申請先と順番を整理してから動き出すことをおすすめします。

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私が記事を書きました。

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司法書士・行政書士/植田麻友

 

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。

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