合同会社設立の注意点とデメリット|株式会社との違いと実務上のリスク

合同会社設立の注意点とデメリット|株式会社との違いと実務上のリスク

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

合同会社は、設立費用が抑えられ、比較的シンプルな手続きで設立できることから、近年、堺市内でも新たに事業を立ち上げる方の選択肢として増えています。しかし、「安く早く作れる」という側面だけに注目して合同会社を選んでしまうと、後になって資金調達や取引先からの信用面で苦労するケースが少なくありません。本稿では、合同会社設立のデメリットと実務上の注意点を、株式会社との違いを踏まえながら整理してお伝えします。

目次

第1章 合同会社とは何か|株式会社との違いと選ばれる理由

合同会社は2006年の会社法施行によって新たに設けられた会社形態で、出資者である「社員」が原則として自ら経営を行う点に大きな特徴があります。株式会社のように出資者(株主)と経営者(取締役)が分離していないため、意思決定のスピードや柔軟性に優れる一方で、後述するようないくつかの制約も抱えています。

(1)合同会社の基本的な仕組み

合同会社では、出資をした人がそのまま「社員」として経営に関与します。取締役会や監査役といった機関設計は不要で、定款によって組織や意思決定のルールを自由に設計できる点が特徴です。この自由度の高さが、中小規模の事業や、家族・少数のパートナーで運営する事業に適しているとされる理由です。

(2)株式会社との違い(機関設計・意思決定)

株式会社では、株主総会での決議や取締役会の運営など、法律で定められた機関設計に従う必要があります。一方、合同会社は定款自治の範囲が広く、社員間の合意さえあれば柔軟な運営ルールを定められる反面、法律上のひな形が少ないため、定款の作り込みが甘いと、後になって「決めていなかった事態」に対応できなくなるリスクがあります。

① 出資者と経営者が一致するという特徴

合同会社では、出資者(社員)がそのまま経営権を持つため、外部から資金だけを出してもらい、経営には関与させないという株式会社的な資金調達の形が原則としてとれません。この点は、事業の成長段階によっては大きな制約となり得ます。

(3)合同会社が選ばれる理由とケース

設立費用を抑えたい方、家族経営や少人数のパートナーシップで事業を行う方、そして株式公開を将来的に目指していない方にとって、合同会社は有力な選択肢です。堺市内でも、士業事務所や小規模な製造業、コンサルティング業などで合同会社を選択する事業者が増えています。

(4)決算公告義務が原則ない点とその影響

株式会社には決算公告の義務がありますが、合同会社にはこの義務がありません。財務情報を外部に開示する必要がないという点はメリットですが、逆に言えば、取引先が財務状況を確認する手段が限られるため、規模の大きな取引を行う際には、決算書の提出を個別に求められることが多くなります。

第2章 合同会社設立のデメリット・注意点

合同会社の最大のデメリットは、設立時のコストの低さとは裏腹に、事業が成長するにつれて感じる「制約」の多さです。本章では、設立前に必ず理解しておくべき注意点を整理します。

(1)社会的信用力の限界

合同会社は株式会社と比べて認知度が低く、取引先や金融機関の中には、合同会社という会社形態自体に馴染みが薄く、無条件に信用してもらえないことがあるという現実があります。特に、大企業を取引先とする業種や、入札に参加する必要がある業種では、この信用力の差が実務上のハードルとなることがあります。

(2)資金調達の限界

合同会社は株式を発行できないため、ベンチャーキャピタルからの出資や、株式を対価とした資金調達という選択肢を取ることができません。資金調達の手段は、社員自身の追加出資や金融機関からの融資に限られるため、大規模な資金を必要とする事業計画には不向きな面があります。

① 株式発行による増資ができない

急成長を目指すスタートアップの場合、複数回にわたる株式による資金調達(エクイティファイナンス)が事業拡大の前提となることが多くありますが、合同会社ではこの手法が使えないため、将来的に株式会社へ組織変更する前提で合同会社を選ぶかどうかを、設立前に検討しておく必要があります

(3)上場できないという制約

合同会社は、その性質上、証券取引所に上場することができません。将来的に株式公開(IPO)を目指す事業計画がある場合、最初から株式会社を選択するか、事業の初期段階のみ合同会社で運営し、成長段階で組織変更するかを、事前に方針として決めておくことが望まれます

(4)意思決定の仕組みが生むリスク(原則社員全員一致)

合同会社の重要事項の決定は、定款に別段の定めがない限り、社員全員の一致が原則となっており、社員が複数いる場合、意見が対立すると経営が停滞するリスクがあります。共同経営者との関係が良好なうちは問題になりませんが、事業が拡大し、方針の違いが生じた際に、身動きが取れなくなるケースが実務上少なくありません。

Q. 社員同士の意見が対立した場合、合同会社ではどのように解決すればよいのでしょうか。

A. まずは定款に、多数決による意思決定のルールをあらかじめ定めておくことが最も有効な対策です。定款で別段の定めをしていない場合、原則として社員全員の同意が必要になるため、対立が生じると事業運営そのものが止まってしまうおそれがあります。設立時点で「どの事項を多数決にするか」「代表社員にどこまでの権限を委ねるか」を具体的に取り決めておくことをお勧めします。

② 意思決定を円滑にするための定款上の工夫

社員全員一致による停滞リスクを避けるため、定款に「重要事項は社員の過半数の同意で決定する」といった別段の定めを設けておくことが、実務上非常に有効な対策となります。どの事項を多数決とし、どの事項を全員一致とするかは、共同経営者との関係性や事業の性質を踏まえて、設立前に十分に話し合っておくべき点です。

(5)知名度の低さによる営業上のデメリット

合同会社という会社形態自体の知名度が株式会社に比べて低いため、初めて取引する相手に説明の手間がかかる、求人の際に応募者から避けられる、といった営業・人事面での目に見えないデメリットが生じることがあります。事業内容や取引先の属性によっては、この点も軽視できない要素です。

(6)有限責任であることへの誤解に注意

合同会社は「合名会社」や「合資会社」と名称が似ているため、無限責任を負う会社だと誤解されることがあります。しかし、合同会社の社員は全員が有限責任であり、出資額を超えて会社の債務を負うことはありません。この点は株式会社と同様であり、合同会社ならではのデメリットではありませんが、金融機関や取引先に説明する際に、正確に理解してもらえるよう準備しておくとよいでしょう。

第3章 定款作成・出資・設立登記における実務上の注意点

合同会社は株式会社よりも手続きが簡易とされていますが、「簡易だからこそ」定款の作り込みや出資の設計を誤ると、後から修正するコストがかえって大きくなることがあります。本章では、設立準備の段階で押さえておきたい実務上の注意点を整理します。

(1)定款で定めるべき事項

合同会社の定款には、商号、目的、本店の所在地、社員の氏名・住所、出資の目的とその価額、社員が有限責任か無限責任かなど、法律上必ず定めなければならない事項があります。これらに加え、任意で定めることができる事項(意思決定のルール、社員の退社・加入の手続きなど)をどこまで具体的に記載するかが、後々の運営の安定性を左右します

① 代表社員の決め方

合同会社では、原則として社員全員が会社を代表する権限を持ちますが、定款で特定の社員を「代表社員」として定めることもできます。複数の社員がいる場合、誰が対外的な代表権を持つのかを明確にしておかないと、契約や銀行取引の場面で混乱が生じるため、設立時点での取り決めが重要です。

(2)出資の種類と財産出資の注意点

出資は金銭だけでなく、不動産や設備などの財産による出資(財産出資)も可能です。ただし、財産出資をする場合には、その財産の価額の算定根拠を明確にしておく必要があり、実態と異なる過大な評価をしてしまうと、後の税務調査や会社の財務状況の把握に影響が出ることがあります

② 設立時期・決算期の決め方における注意点

設立日や決算期の決め方は、税務上のメリット・デメリットに直結します。消費税の納税義務が生じるタイミングや、最初の決算期を短くしすぎることで生じる事務負担の増加など、設立前に検討しておくべき論点は少なくありません。事業の繁忙期を避けて決算期を設定することも、実務上は重要な視点です。

(3)公証役場の認証が不要な点の落とし穴

株式会社の定款は公証役場での認証が必須ですが、合同会社の定款は認証が不要です。この点は費用と時間を節約できる利点ですが、第三者である公証人によるチェックが入らないため、定款の不備や矛盾に誰も気づかないまま設立されてしまうリスクがあるという側面も持っています。定款作成の段階で、専門家によるレビューを受けておくことが望ましいでしょう。

(4)商号・事業目的の決め方における注意点

商号については、同一の本店所在地に同一の商号がある場合、登記ができません。また、事業目的の記載が曖昧すぎると、銀行口座の開設審査や許認可の取得において、事業内容が正確に伝わらず、追加の説明を求められることがあります。将来的に行う可能性のある事業まで見据えて、目的欄を検討しておくことをお勧めします。

Q. 定款の認証が不要ということは、専門家に依頼せず自分だけで定款を作成しても問題ないのでしょうか。

A. 法律上は問題ありませんが、公証人によるチェックが入らない分、記載内容の不備や社員間のルールの不備に、誰も気づかないまま設立されてしまうリスクがあります。特に、社員が複数いる場合の意思決定ルールや、将来の退社・持分譲渡に関するルールは、トラブルの火種になりやすい部分ですので、事前に十分な検討を行うことをお勧めします。

(5)設立にかかる実費の目安

合同会社の設立には、公証役場での定款認証が不要な分、株式会社よりも実費を抑えられます。以下は、一般的にかかる法定費用・実費の目安です。

定款用紙・印紙代等 0円〜数千円程度(電子定款の場合は不要)
設立登記の登録免許税 60,000円(出資額×0.7%が60,000円を超える場合はその金額)
法人印鑑の作成費 数千円〜1万円程度
登記事項証明書・印鑑証明書の取得費 数百円〜数千円程度
合計(法定費用・実費の目安) 6万5千円〜7万5千円程度

上記はあくまで法定費用・実費のみの目安であり、事業内容や出資額によって変動します。

第4章 設立後に生じる実務課題

合同会社の設立が完了した後も、株式会社とは異なる実務上の課題に向き合う必要があります。本章では、設立後に実際によく相談を受ける論点を取り上げます。

(1)銀行融資審査での見られ方

金融機関が融資審査を行う際、会社形態そのものが融資の可否を直接左右することは多くありませんが、合同会社の場合、代表者の個人的な信用力や事業計画の具体性が、株式会社の場合よりも重視される傾向があるとの指摘があります。特に創業融資を検討する場合には、事業計画書の内容を一層丁寧に作り込むことが望まれます。

① 銀行との交渉で押さえておきたいポイント

合同会社であることを理由に融資条件で不利な扱いを受けそうな場面では、決算書や事業計画書の質を高め、代表社員個人の実績や資産状況を丁寧に説明することで、会社形態による印象の差を補うことができることが多くあります。金融機関の担当者に、合同会社を選んだ理由(コスト効率や意思決定の速さなど)を積極的に説明することも、交渉を有利に進める一助となります。

(2)取引先からの信用調査で聞かれること

新規の取引先と契約を結ぶ際、相手方の与信管理部門から「なぜ株式会社ではなく合同会社を選んだのか」と質問されることがあります。合理的な理由(コスト、意思決定の速さ、事業の性質など)を明確に説明できるようにしておくことで、不要な懸念を払拭しやすくなります。

(3)社員の退社・持分譲渡時のリスク(出口戦略)

合同会社の社員が退社する場合や、持分を第三者に譲渡する場合には、原則として他の社員全員の同意が必要になるという制約があります。株式会社の株式のように自由に売買できるわけではないため、共同経営者との関係が悪化した際に、片方が会社を離れたくても持分を譲渡できず、身動きが取れなくなるケースがあります

① 持分譲渡・退社に関するルールを事前に定めておく重要性

このようなリスクを避けるためには、定款に、退社の手続きや持分の評価方法、譲渡の際の手続きをあらかじめ具体的に定めておくことが極めて重要です。「出口」のルールを決めずに合同会社を設立してしまうと、事業が順調な時期には問題にならなくても、関係が悪化した際に深刻なトラブルに発展するおそれがあります。

② 事業承継を見据えた社員構成の検討

合同会社では、社員が死亡した場合、原則として持分は相続の対象となりますが、定款に別段の定めがない限り、相続人が当然に社員の地位を承継するわけではなく、他の社員の同意が必要になる場合がある点に注意が必要です。将来の事業承継を見据えている場合は、定款に承継に関するルールを明記しておくことで、想定外の事態を防ぐことができます。

(4)将来の増資・株式会社への組織変更を見据えた設計

事業が成長し、外部からの大規模な資金調達が必要になった場合、合同会社から株式会社へ組織変更することも制度上可能です。ただし、組織変更には登記手続きや債権者保護手続きなど一定の手間と時間がかかるため、将来的に大きな資金調達を予定している事業者は、設立時点からその可能性を見据えた事業計画を立てておくことが望まれます。

(5)堺市内で事業拠点を構える場合の留意点

堺・堺東周辺で合同会社を設立する場合、本店所在地として自宅や賃貸オフィスを利用するケースが多く見られます。本店所在地の選び方は、金融機関の融資審査や、地元の商工会・商店会との関わり方にも影響するため、単に費用面だけでなく、事業のブランディングや取引先からの見え方も踏まえて検討することをお勧めします。

Q. 合同会社から株式会社に変更することは簡単にできるのでしょうか。

A. 制度上は組織変更という手続きで可能ですが、債権者保護のための公告手続きや、株式会社としての定款を新たに作成する手続きなど、一定の期間と手順が必要になります。将来的に株式会社化を予定している場合は、あらかじめそのタイミングや必要な手続きの概要を把握しておくことで、スムーズな移行につながります。

第5章 まとめ:合同会社を選ぶ前に押さえておくべきポイント

合同会社は、設立費用を抑え、柔軟な運営ができるという大きな利点を持つ一方で、社会的信用力、資金調達の限界、社員間の意思決定や退社・持分譲渡に伴うリスクといった、事業の成長段階で問題になりやすいデメリットも抱えています。設立時のコストだけに注目せず、事業の将来像に合わせて会社形態を検討することが、後悔しない選択につながります。

「合同会社と株式会社、どちらが自社の事業に合っているのか判断できない」

「共同経営者と、退社や持分譲渡のルールをどう定めればよいかわからない」

「将来的に株式会社へ組織変更する可能性も見据えて定款を作りたい」

南海堺東駅近くの当事務所では、堺・堺東周辺で事業を立ち上げる方の会社設立を数多くサポートしております。合同会社と株式会社のどちらを選ぶべきか迷われている方も、まずはお気軽にご相談ください。

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1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。

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