遺言の種類とおすすめの方法
大阪の堺の司法書士の植田麻友です。
弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。
第1章 遺言の種類とそれぞれの特徴
大阪の堺の司法書士の植田麻友です。「遺言書を作りたいけれど、どの方式を選べばよいのか分からない」というご相談を数多くいただきます。遺言には主に自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言という、3つの方式があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。この章では、遺言を残すことの意義と、3つの方式の基本的な特徴について整理します。
(1)遺言を残すことの意義
遺言は、ご自身の財産をどのように分けてほしいかという意思を、法的に有効な形で残しておくための制度です。
① なぜ遺言が必要なのか
「うちは家族の仲が良いから遺言は不要」と考える方も多いのですが、実際に相続が発生すると、財産の分け方をめぐって想定外の意見の食い違いが生じることは珍しくありません。遺言書があれば、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)を経ずに、あらかじめ定めた内容で相続手続きを進めることができます。
② 遺言がない場合に生じる問題
遺言がない場合、相続財産は民法で定められた法定相続分に従って、相続人全員の遺産分割協議によって分けることになります。相続人の中に連絡が取りにくい方や、認知症などで判断能力が低下している方がいる場合には、遺産分割協議自体が長期化し、相続手続き全体が停滋してしまうことがあります。
(2)遺言の3つの主な種類
民法上、遺言には普通方式として30つの種類が定められています。
① 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の概要
自筆証書遺言は、遺言者が自身で全文(財産目録を除く)を手書きし、日付・氏名を記載して押印する方式です。公正証書遺言は、公証人が関与して作成する方式で、証人2名の立会いが必要です。秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、その存在のみを公証人と証人に証明してもらう方式ですが、実務上の利用件数は非常に少なくなっています。
② それぞれの利用割合と実務上の傾向
実務上は、自筆証書遺言と公正証書遺言の2つが圧倒的に多く利用されています。秘密証書遺言は、方式が厳格である一方で自筆証書遺言のような無効リスク回避のメリットが少なく、近年ではほとんど利用されていないのが実情です。そのため、本記事でも自筆証書遺言と公正証書遺言を中心に解説します。
(3)遺言作成を検討すべきタイミング
「まだ元気だから遺言はまだ早い」と考える方も多いのですが、遺言はいつでも書き直すことができる制度です。
① 早めに作成しておくことのメリット
健康なうちに一度遺言を作成しておけば、判断能力が低下してから慌てて準備する必要がなくなり、内容についてもじっくりと考える時間を確保できます。認知症など判断能力が低下した後は、有効な遺言を作成すること自体が難しくなる点にも注意が必要です。
② 定期的な見直しの重要性
一度作成した遺言も、その後の家族構成や財産状況の変化に応じて内容を見直すことが望ましく、特に結婚・離婚・出産・不動産の売却や取得といった大きな変化があった際には、内容を再確認することをお勧めします。
第2章 自筆証書遺言のメリット・デメリットと法務局保管制度の活用
自筆証書遺言は、思い立ったときにすぐ作成できる手軽さが魅力ですが、その反面注意すべき点も多くあります。この章では、自筆証書遺言のメリット・デメリットと、法務局における保管制度について解説します。
(1)自筆証書遺言のメリット・デメリット
自筆証書遺言には、費用をかけずに作成できるという大きなメリットがあります。
① 手軽に作成できる利点
自筆証書遺言は、証人や公証人の関与が不要で、紙とペンさえあればいつでも作成できるという手軽さが最大のメリットです。財産目録についてはパソコンでの作成や通帳のコピー添付が認められており、以前に比べて作成の負担は軽減されています。
② 方式不備による無効リスクと保管の問題
一方で、自筆証書遺言は全文を自書する、日付・氏名を記載する、押印するといった方式要件を一つでも欠くと無効になってしまうという厳格なリスクがあります。また、自宅で保管していた場合、遺言書が発見されなかったり、相続人の一人によって内容が書き換えられたり、破棄されてしまったりするリスクも否定できません。
(2)法務局における自筆証書遺言書保管制度
こうした自筆証書遺言のデメリットを補うため、2020年から法務局における自筆証書遺言書保管制度が始まっています。
① 保管制度を利用するメリット
法務局に遺言書を預けることで、紛失や書き換え、破棄のリスクを大きく減らすことができるほか、相続開始後の家庭裁判所での検認手続も不要になります。また、法務局側で外形的な方式のチェックを行ってもらえるため、日付の記載漏れなど形式的な不備を防ぎやすくなる点もメリットです。
② 保管制度でも解消されない注意点
ただし、保管制度を利用しても、遺言の内容そのものの有効性や、遺留分を侵害していないかといった実質的な部分までは法務局はチェックしてくれません。内容面での不備やトラブルを避けるためには、作成段階で司法書士などの専門家に内容を確認してもらうことをお勧めします。
(3)保管制度利用の手続きの流れと費用
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、事前に手続きの流れと必要な費用を把握しておくと安心です。
① 申請から保管までの流れ
保管の申請は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局(遺言書保管所)に対して、遺言者本人が必ず出頭して行う必要があります。代理人による申請は認められていない点に注意が必要です。
② 手数料と相続開始後の証明書取得
保管の申請時には手数料として3,900円が必要です。相続開始後、相続人が遺言書の内容を確認するためには、遺言書情報証明書の交付請求(1通1,400円)や、遺言書が保管されているかどうかを確認する遺言書保管事実証明書の交付請求(1通800円)を法務局に対して行うことになります。
第3章 公正証書遺言のメリット・デメリットと作成の流れ
公正証書遺言は、公証人の関与のもとで作成される、もっとも確実性の高い遺言方式です。この章では、そのメリット・デメリットと、実際の作成の流れについて解説します。
(1)公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言は、費用や手間がかかる分、確実性の高さで大きなメリットがあります。
① 無効リスクの低さと検認不要のメリット
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が関与して作成するため、方式不備による無効リスクがきわめて低く、原本が公証役場に保管されるため紛失や偽造のリスクもほとんどありません。また、相続開始後の家庭裁判所での検認手続も不要です。
② 費用と証人の手配というデメリット
一方で、公正証書遺言には公証人手数料という費用が発生し、証人2名をで手配する必要があるというデメリットがあります。証人には、推定相続人やその配偶者・直系血族などはなれないため、専門家に証人を依頼するケースも多く見られます。また、公証役場にお願いすることで証人の手配をしてくれるケースもあります。
(2)作成の流れと必要書類
公正証書遺言の作成には、事前の準備から当日の手続きまで、いくつかのステップがあります。
① 公証役場との事前打ち合わせ
まずは、遺言の内容の案を作成し、戸籍謄本や不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書などの必要書類を揃えたうえで、公証役場と事前に打ち合わせを行います。専門家に依頼する場合は、この案文作成や書類収集を代行してもらえるため、負担を大きく減らすことができます。
② 証人2名の立会いのもとでの作成当日の流れ
作成当日は、公証人が遺言者に内容を読み聞かせ、遺言者と証人2名がその内容を確認したうえで署名・押印を行います。公正証書遺言の作成費用は、遺言の対象となる財産の価額によって変動する仕組みになっています。主な費用の目安は以下のとおりです。
| 財産の価額 | 公証人手数料の目安 |
|---|---|
| 200万円以下 | 7,000円 |
| 500万円以下 | 11,000円 |
| 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 3,000万円以下 | 23,000円 |
| 証人手配費用(専門家依頼の場合) | 1名あたり1万円程度 |
| 合計(目安) | 財産額に応じた手数料+証人費用等で数万円程度 |
なお、上記の手数料は財産の総額や相続人ごとの取得額によって算定方法が異なるため、正確な金額については公証役場や専門家への確認をお勧めします。
(3)遺言執行者の指定という実務上のポイント
公正証書遺言を作成する際には、あわせて遺言執行者を指定しておくことを強くお勧めしています。
① 遺言執行者を指定するメリット
遺言執行者を指定しておくと、相続開始後の不動産の名義変更や預貯金の解約手続きなどを、遺言執行者が単独で進めることができるため、相続人全員の協力を得られない場合でも手続きを滞りなく進めることができます。
② 専門家を遺言執行者に指定する場合の注意
相続人の中の一人を遺言執行者に指定することも可能ですが、他の相続人との関係が良好でない場合や、専門的な手続きに不慣れな場合には、司法書士や弁護士などの専門家を遺言執行者に指定しておくことで、手続きをより円滑に進めることができます。
第4章 家族構成別・おすすめの遺言の選び方
遺言の方式選びは、ご家族の状況によって適した選択肢が異なります。この章では、代表的な家族構成別に、おすすめの遺言の選び方をご紹介します。
(1)単身の方・子どものいないご夫婦の場合
単身の方や、お子様のいないご夫婦は、特に遺言の必要性が高いケースといえます。
① 単身の方が遺言を残す重要性
単身の方の相続では、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースが多く、疎遠になっている親族との遺産分割協議が難航しやすいという特徴があります。特定の親族や、お世話になった方に財産を残したい場合には、公正証書遺言で明確に意思を残しておくことをお勧めします。
② 子どものいないご夫婦がとくに注意すべき点
お子様のいないご夫婦の場合、配偶者だけでなく亡くなった方の親や兄弟姉妹も相続人になるため、配偶者に全財産を残したいと考えていても、遺言がなければ実現できません。ただし、兄弟姉妹には遺留分がないため、公正証書遺言で「配偶者にすべて相続させる」と明記しておけば、配偶者の生活を確実に守ることができます。
(2)お子様がいるご家庭・再婚されたご家庭の場合
お子様がいらっしゃるご家庭や、再婚されたご家庭では、遺留分への配慮がとくに重要になります。
① お子様が複数いる場合の遺留分への配慮
特定のお子様に多くの財産を承継させたい場合、他のお子様の遺留分を侵害しない範囲で内容を検討することが望ましいといえます。遺留分を大きく侵害する内容にすると、相続開始後に遺留分侵害額請求という形でトラブルに発展するおそれがあります。
② 再婚家庭・前婚のお子様がいる場合の注意点
再婚されたご家庭で、前の配偶者との間にお子様がいらっしゃる場合は、現在の配偶者・お子様と、前婚のお子様の双方に配慮した内容を検討する必要があります。このようなケースは相続人間の人間関係が複雑になりやすいため、公正証書遺言により明確な内容を残しておくことが特に有効です。
Q. 自筆証書遺言と公正証書遺言、家族構成にかかわらずどちらか一方をお勧めできますか。
A. 一概にどちらが良いとは言えません。財産の内容がシンプルで、相続人間の関係も良好な場合には自筆証書遺言(法務局保管制度の利用)でも十分なケースがあります。一方、相続人が多い、疎遠な親族がいる、遺留分に配慮が必要、事業承継が絡むなど、内容が複雑になりやすいご家庭では、無効リスクが低く執行力も高い公正証書遺言をお勧めしています。
(3)事業承継が絡むケースの場合
会社を経営されている方の相続では、事業承継の観点からの検討が不可欠です。
① 経営者の遺言でおさえておきたいポイント
自社の株式や事業用資産を後継者に集中して承継させたい場合、遺言でその旨を明確に定めておかなければ、株式が複数の相続人に分散し、経営権が不安定になるおそれがあります。後継者を明確にした遺言を作成することは、事業の継続性を守るうえで重要な対策です。
② 後継者以外の相続人への配慮
後継者に株式や事業用資産を集中させる内容にする場合、他の相続人の遺留分に配慮した代償財産の準備や、生命保険の活用などをあわせて検討しておくことが、後々のトラブル防止につながります。事業承継が絡むケースでは、司法書士だけでなく税理士など他の専門家との連携も重要になります。
Q. 経営している会社の株式を後継者である長男にすべて相続させる内容の遺言を残しても問題ないですか。
A. 遺言自体は有効に作成できますが、他の相続人の遺留分を侵害する内容になっている場合、後継者が遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。会社の経営権を安定させたいという目的と、他の相続人への公平感のバランスをとるため、代償金の準備方法などもあわせて事前に検討しておくことをお勧めします。
第5章 まとめ
遺言には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言という3つの方式があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。どの方式を選ぶべきかは、ご自身の財産状況やご家族の構成によって異なり、単身の方、子どものいないご夫婦、お子様が複数いるご家庭、再婚されたご家庭、事業承継が絡むケースなど、状況に応じた検討が必要です。
「うちの場合はどちらの遺言が向いているのか」と迷われた際には、早い段階で司法書士などの専門家に相談し、ご家族の状況に合った遺言の形を一緒に検討していくことをお勧めします。堺・堺東エリアで遺言の作成をご検討中の方は、お気軽に当事務所までご相談ください。
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私が記事を書きました。
中小企業をを元気にする活動をしています!!

司法書士・行政書士/植田麻友
| 1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。 |






