堺の司法書士が解説する会社代表者住所非表示措置の実務と今後の拡大動向

堺の司法書士が解説する会社代表者住所非表示措置の実務と今後の拡大動向

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

会社を設立される際、あるいはすでに代表取締役として登記されている方から、「登記事項証明書を取得すれば誰でも自分の自宅住所がわかってしまうのか」というご相談を、ここ数年で急速に多くいただくようになりました。SNSが日常に浸透した現在、代表者の住所情報は思わぬ形で拡散し、経営者本人やそのご家族の安全を脅かす事態にまで発展することがあります。本稿では、堺・堺東で会社設立や商業登記に携わる司法書士の立場から、令和6年10月に始まった代表取締役等住所非表示措置の仕組みと実務上の注意点、そして今まさに規制改革の議論の中で検討されている今後の拡大動向までを、できるだけ深く整理してお伝えします。

 

本記事は下記を参考に作成しております。

 


第1章 なぜ今「代表者の住所」が問題になるのか

(1)登記事項証明書は誰でも取得できるという事実

株式会社の代表取締役等の住所は、商業登記法第10条第1項に規定される登記事項証明書、または登記事項要約書に記載され、手数料を支払えば全国どこの法務局窓口・オンライン申請システムからでも、本人の関与なく第三者が取得できます。これは法人の信用制度を支える重要な仕組みである一方、代表者個人の住所という極めてプライベートな情報が、事業とは無関係な第三者にまで公開されてしまうという副作用を伴います。

(2)SNS時代に顕在化したリスク

近年、寄付やクラウドファンディングをきっかけに好意を寄せられた代表者の自宅に突然訪問者が現れたり、事業方針への反発から代表者の住所がSNS上で拡散されたりする事例が、法務省の検討資料でも具体的に指摘されています。

① 自宅特定・嫌がらせ等の実例

実際に、脅迫的なメッセージが記載された文書が代表者の自宅に届いた、あるいは特定の活動に対して敵対的な集団が代表者の自宅前で待ち伏せや偵察のような行為を行った、といった被害が報告されています。これは特定の業種に限った話ではなく、医療法人や社会福祉法人の代表者についても同様の懸念が指摘されており、診療時間や経歴を公開して事業を営む性質上、他業種に比べて住所を特定されるリスクが相対的に高いとの指摘もあります。

② 経営者本人だけでなく家族に及ぶ影響

住所が特定されることの怖さは、経営者本人への直接的な危害だけにとどまりません。同居するご家族が不安を抱えたまま生活せざるを得なくなること、また子どもの通学路や生活圏まで把握されてしまう懸念があることも、実務相談の現場でよく耳にする切実な声です。こうした心理的負担は、経営者としての意思決定や事業への集中力にも少なからず影響を与えます。

(3)令和6年10月の制度創設という転換点

こうした懸念の高まりを受け、法務省は商業登記規則を改正し、令和6年10月から株式会社の代表取締役等に限り、一定の要件のもとで登記事項証明書及び登記事項要約書に行政区画以外の住所を記載しないこととする代表取締役等住所非表示措置を創設しました。これにより、非表示措置の要件を満たせば、登記事項証明書上は「大阪府堺市」までの表示にとどめ、番地以下の詳細な住所は表示させないことが可能になりました。制度創設から日が浅いこともあり、実務上はまだ手探りの部分も多いのが実情です。


第2章 代表取締役等住所非表示措置の仕組みと要件

(1)対象となる法人・代表者

現行制度の対象は、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人に限定されています。ここで注意していただきたいのは、合同会社の代表社員や、一般社団法人・公益法人等の代表者は、令和8年7月現在の制度上は対象に含まれていないという点です。堺・堺東エリアでは近年、一般社団法人の形態を選ばれる士業・コンサルタントの方や、地域の福祉・教育系NPOの設立をご相談いただくケースも増えていますが、こうした法人形態の代表者は現時点ではこの措置の恩恵を受けられません。この点は第4章で詳しく触れます。

(2)非表示にできる範囲と限界

非表示措置が適用されるのは、あくまで登記事項証明書及び登記事項要約書の記載に限られます。登記簿上の住所そのものが消えるわけではなく、法務局には引き続き詳細な住所が保管されており、附属書類の閲覧請求など正当な利害関係を証明できる手続を経れば、住所を確認できる場合があります。「非表示措置を講じれば住所が完全に秘匿される」という理解のまま申請されるご相談者も少なくないため、私は必ずこの限界を最初にご説明するようにしています。

(3)申請の流れ

① 設立登記と同時申請が原則

非表示措置の申出は、商業登記規則第31条の3に基づき、株式会社の設立登記や代表取締役等の就任登記など、代表取締役等の住所を登記簿に記録すべき登記の申請と同時に行うことが原則とされています。つまり、「とりあえず会社を設立してから、落ち着いて後日申請しよう」という進め方は認められておらず、設立登記の準備段階から非表示措置の利用を織り込んでおく必要があります。

② 必要書類とスケジュール管理

非表示措置の申出には、代表者の住所を証する書面(住民票の写し等)に加え、独立行政法人住宅金融支援機構のフラット35を利用した住宅ローンの償還表など、一定の要件を満たすことを示す資料が必要になる場合があります。必要書類の収集には数日から数週間を要することもあるため、設立を急ぐ起業家の方ほど、早い段階で司法書士に相談し、逆算したスケジュールを組むことが重要です。

Q&A:非表示措置は会社設立後でも申請できますか?

A.現行制度では、設立登記や代表取締役等の就任登記と同時に申請することが原則とされており、すでに設立済みで通常どおり住所が登記されている会社が、後から単独で非表示措置だけを申し出ることは認められていません。ただし、代表者の変更登記や本店移転登記など、住所の記載が改めて生じる登記のタイミングで申請できる場合がありますので、既存の会社の代表者の方は、次にどのような登記が発生し得るかも含めて司法書士にご相談いただくことをおすすめします。


第3章 実務上の注意点:銀行・公証役場との交渉

(1)金融機関との関係で生じる論点

① 融資審査における住所確認の壁

非表示措置を利用している株式会社については、代表取締役等の住所を登記事項証明書によって証明できなくなるため、当該株式会社の取引先や金融機関における与信判断等に、一定の影響が生じるおそれがあるとの懸念が法務省の検討資料でも明確に指摘されています。実際、融資の実行にあたって金融機関が代表者個人の信用情報や自宅の登記情報と紐づけた審査を行っている場合、非表示措置により従来と同じ確認方法が使えなくなることがあります。

② 実務対応としての情報提供書面

私が堺エリアの金融機関担当者と接する中での実感としては、非表示措置を利用する予定がある場合、事前に取引金融機関へその旨を伝え、必要に応じて住所を確認できる補完書類(住民票の写しの提出等)を任意で提供する運用を取ることで、審査上のトラブルを未然に防げるケースが多いです。「非表示措置=金融機関に何も見せない」ではなく、「登記事項証明書という公的書面には出さないが、必要な相手には別途誠実に開示する」という使い分けの発想が実務上は重要になります。

(2)公証役場・法務局窓口での実務

定款認証を行う公証役場や、登記申請を受け付ける法務局の窓口においても、非表示措置の申出書類に不備があると、認証や登記の受理そのものが遅れることがあります。特に、住所を証する書面の有効期限や、申出書の記載様式は法務局ごとに運用の細部が異なる場合があるため、事前に管轄法務局へ確認を取ったうえで書類一式を整えることが、スケジュール遅延を防ぐ最大のポイントです。

(3)遡及適用不可という制約への対処

非表示措置の対象は、商業登記規則第31条の3に定める登記によって住所を記録すべき代表取締役等の住所とされており、当該登記の前に登記されている代表取締役等の住所は制度の対象外です。つまり、非表示措置を講じる前に登記された住所は、当該代表取締役等が在任中かどうかにかかわらず表示され続けるため、非表示措置を講じても過去に公開された住所と現在の住所が同一である場合、プライバシー侵害等のおそれが解消されないという限界があります。この点は出口戦略、つまり将来的な役員変更や本店移転を見据えた住所選定と併せて検討する必要があり、私はご相談の際、必ず「今の住所を将来どう扱いたいか」まで踏み込んでヒアリングするようにしています。

非表示措置申請に伴う主な費用項目(目安) 金額目安
登録免許税(株式会社設立登記・非表示措置申出と同時の場合の加算なし) 150,000円〜
住所を証する書面の取得費用(住民票の写し等) 300円〜500円程度
司法書士報酬(非表示措置申出書類の作成・提出代行を含む) 30,000円〜80,000円程度
定款認証手数料(公証役場) 30,000円〜50,000円
合計額(総額)目安 210,300円〜280,500円程度

(4)出口戦略:株式譲渡・M&A・事業承継時に生じる影響

非表示措置は「設立時・在任時」の視点で語られがちですが、実務家として特に重要だと考えているのが、将来の出口、すなわち株式譲渡やM&A、親族内事業承継の場面での取り扱いです。買収監査(デューデリジェンス)の過程で、買い手側の専門家から代表取締役の実在性や住所確認を登記事項証明書で行いたいと求められることがあり、非表示措置を講じている場合は、住民票の写しなど代替書類の提出を別途準備しておく必要があります。また、事業承継により代表者が交代する際には、非表示措置の効力は新代表者に自動的に引き継がれるものではなく、新たに就任する代表者について改めて非表示措置の要件を満たすかどうかを確認し、必要であれば再度申出を行わなければならない点にも注意が必要です。堺・堺東エリアでも、後継者への円滑な承継を見据えて早めに司法書士へご相談いただくケースが増えており、私は登記実務だけでなく、将来の承継設計まで見据えたご提案を心がけています。

Q&A:会社を売却する際、非表示措置を利用していると不利になりますか?

A.非表示措置そのものが売却価格や交渉力に直接不利益をもたらすものではありませんが、買い手側の金融機関やデューデリジェンス担当者が代表者の住所確認を求める場面では、登記事項証明書だけでは対応できないため、住民票の写し等の補完書類をあらかじめ準備しておくことをおすすめします。事前に必要書類を整理しておくことで、交渉のスピード感を損なわずに手続を進めることができます。


第4章 非表示措置の利用拡大に伴う課題と規制改革の動向

(1)利用実績の低さとその背景

株式会社の現存数が約220万社であるのに対し、非表示措置の利用実績はいまだ全体の1%に満たない水準にとどまっているとされています。制度の存在自体が十分に知られていないこと、設立登記と同時申請でなければならないという制約、そして必要書類の準備に手間がかかることが、利用が伸び悩む主な要因として指摘されています。

(2)訴訟送達・消費者被害回復との緊張関係

代表取締役等の住所は、民事訴訟手続において普通裁判籍の判断や送達などの重要な役割も果たしています。非表示措置が広がり、代表者の住所を迅速に把握できなくなると、消費者被害等を起こした法人の営業所が不明又は閉鎖している場合に、代表者の住所宛てに被害回復を求める書面を送達するといった対応が困難になるおそれがあるとの指摘もあり、プライバシー保護と被害者救済のバランスをどう取るかが、制度設計上の大きな論点になっています。

(3)弁護士法23条照会・閲覧請求の運用改善

非表示とされた代表者の住所を確認する現行の手段としては、商業登記法第11条の2に基づく附属書類の閲覧請求や、弁護士法第23条の2に基づく弁護士会照会があります。もっとも、閲覧請求では利害関係を証する書面として訴状の案のみが挙げられ、それ以外の書面での証明可否が明確でないため準備に時間がかかる傾向があるとの声があり、弁護士会照会についても手続に時間や費用がかかり利便性が低いとの指摘があります。こうした運用面の課題を解消しない限り、非表示措置の対象拡大だけを先行させると、正当な理由による住所確認がかえって困難になりかねないというジレンマが存在します。

(4)対象拡大の議論(一般社団法人等への拡大検討)

規制改革推進会議では、非表示措置の対象を株式会社の代表取締役等に限らず、一般社団法人、公益社団法人、公益財団法人、特定非営利活動法人等の代表者にも広げるべきとの議論が進められています。加えて、非表示措置の申出を登記申請と同時でなくても可能とすること、また非表示措置を講じる前に登記された住所についても対象とすることなど、制度の使い勝手そのものを見直す方向性が示されています。堺・堺東エリアで一般社団法人の設立をご検討中の方にとっても、今後の制度改正は見逃せない動きだといえるでしょう。

Q&A:一般社団法人の代表者は将来非表示措置を使えるようになりますか?

A.令和8年7月現在、非表示措置の対象は株式会社の代表取締役等に限定されていますが、規制改革推進会議の検討資料では、一般社団法人・公益法人・特定非営利活動法人等の代表者にも対象を拡大する方向で、法務省が結論を得次第速やかに措置を講じるとされています。現時点で一般社団法人を設立される場合は非表示措置を利用できませんが、今後の法改正の動向を踏まえ、定款や事業目的の検討と併せて、住所の取り扱いについても長期的な視点でご相談いただくことをおすすめします。


第5章 まとめ:堺で会社設立・住所非表示措置をお考えの方へ

代表取締役等住所非表示措置は、経営者とそのご家族の安全を守るための重要な制度である一方、設立登記と同時申請でなければならない、遡及適用がされない、金融機関等との関係で一定の配慮が必要になるなど、実務上押さえておくべき論点が数多くあります。さらに、対象法人の拡大や運用改善に向けた議論も進行中であり、今後も制度は変化し続けることが見込まれます。南海堺東駅近くの当事務所では、司法書士としての登記実務の知識に加え、地域の金融機関の実務傾向も踏まえたうえで、非表示措置の利用可否やスケジュール、将来の本店移転・役員変更まで見据えたご提案を行っています。堺で新しく会社を設立されようとしている起業家の皆様、そしてすでに代表者として登記されている経営者の皆様、まずはお気軽にご相談ください。私が誠心誠意、最後まで並走させていただきます。

 

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司法書士・行政書士植田麻友

 

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。

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