株式会社と合同会社の違いと選び方|設立費用・税務・融資・出口戦略まで実務で比べる
大阪の堺の司法書士の植田麻友です。
弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。
会社を設立しようと決意したとき、多くの方が最初にぶつかる壁が「株式会社にするか、合同会社にするか」という選択です。インターネットで検索すると「合同会社は設立費用が安い」「株式会社のほうが信用力が高い」といった断片的な情報があふれていますが、実際のところ、その差は費用だけにとどまりません。税務の扱い、銀行融資の可否、将来の事業承継やM&Aへの対応力、さらには代表者のプライバシーに至るまで、両者の違いは多岐にわたります。
堺で起業相談を受けていると、「どちらでも同じでしょう」と軽く考えて合同会社を選んだ結果、後から株式会社への組織変更に数十万円のコストがかかった、あるいは「融資の審査で不利になった」と後悔される方が少なくありません。反対に、最初から株式会社を選んでいれば不要だったはずの定款認証費用や登録免許税を支払った方もいます。会社形態の選択は、設立時だけでなく5年後・10年後の経営を左右する極めて重要な法的決断です。
本記事では、司法書士・行政書士として大阪府堺市で会社設立・商業登記を多数手がけてきた経験から、株式会社と合同会社の違いを実務的な視点で徹底比較します。費用の一覧表、銀行や公証役場との交渉実態、出口戦略まで踏み込んだ内容を、できる限り具体的にお伝えします。
第1章 株式会社と合同会社、そもそも何が違うのか|法的構造と基本的な差異
(1)「社員」の概念と出資・経営の分離
株式会社と合同会社(LLC)は、いずれも「有限責任」を特徴とする法人形態です。出資者が会社の債務に対して出資額を限度としてしか責任を負わない点は共通しています。しかし、その内部構造は根本的に異なります。
① 株式会社の構造:所有と経営の分離
株式会社では、出資者を「株主」と呼び、経営を担う「取締役」とは明確に役割が分かれています。株主は議決権を行使して経営方針に関与できますが、日常の業務執行は取締役が行います。この「所有と経営の分離」という仕組みにより、出資者(投資家)を広く集めながら、プロの経営者に運営を任せるという資本主義の基本モデルが成り立っています。上場(IPO)が可能なのも、株式会社だけです。
② 合同会社の構造:所有と経営の一致
合同会社では、出資者を「社員」と呼び、原則としてすべての社員が業務執行権と代表権を持ちます。ただし、定款によって業務執行社員や代表社員を定めることができます。所有と経営が一致しているため、少人数の強い信頼関係で結ばれたメンバーで経営する場合に向いていますが、外部から投資家を招き入れることや、上場を目指すことはできません。
(2)登記事項の差異と情報開示の範囲
登記事項証明書(いわゆる「登記簿謄本」)に記載される内容も、両者で異なります。
株式会社では、発行可能株式総数・発行済株式数・資本金の額・取締役・監査役等が記載されます。一方、合同会社では、資本金の額・業務執行社員・代表社員が記載されますが、株式に関する記載は一切なく、社員の出資比率も登記簿上は公開されません。この点は、出資構成を外部に知られたくないケースでメリットとなりえます。
ただし、注意が必要なのは、合同会社は決算公告(官報への掲載)義務がないものの、社員構成の変更(社員の加入・退社)のたびに定款変更と登記が必要になることです。株式会社における株式譲渡に比べて、社員の変更手続きは合同会社のほうが格段に煩雑になります。
(3)意思決定の仕組みと柔軟性
① 株式会社の意思決定
株式会社の重要事項は、株主総会の決議によって決まります。定款変更・役員選任・解散など法定の事項は株主総会の特別決議(議決権の過半数の株主が出席し、その3分の2以上の賛成)が必要です。中小規模の株式会社(取締役会非設置会社)では手続きは比較的シンプルですが、株主が複数いる場合は、株主間のパワーバランスが経営に直接影響します。
② 合同会社の意思決定
合同会社の意思決定は原則として社員の全員一致です。ただし、定款で別段の定めをすることができ、たとえば業務執行事項は業務執行社員の過半数で決議するよう定めることも可能です。この柔軟性は合同会社の大きな特徴ですが、社員間で対立が生じた場合、全員一致が原則のため経営が完全に行き詰まるリスクもあります。
第2章 設立コストと手続きの実態比較|公証役場・登録免許税・定款認証の違い
(1)設立にかかる実費の比較
会社設立時にかかる費用は、大きく「定款認証費用」「登録免許税」「その他の実費」に分かれます。
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料(公証役場) | 3万円〜5万円(資本金額により変動) | 不要(0円) |
| 定款の印紙税(電子定款の場合) | 0円(電子定款) | 0円(電子定款) |
| 登録免許税(設立登記) | 15万円〜(資本金×0.7%、最低15万円) | 6万円〜(資本金×0.7%、最低6万円) |
| 登記事項証明書取得費用 | 600円/通 | 600円/通 |
| 印鑑証明書取得費用 | 450円/通 | 450円/通 |
| 合計(自己申請の最低ライン) | 約20万〜22万円 | 約6万〜7万円 |
※司法書士に依頼した場合の目安は、株式会社で25万〜35万円程度、合同会社で10万〜15万円程度です(報酬は事務所により異なります)。
(2)公証役場での定款認証——株式会社だけに課される手続き
株式会社の設立において最大の関門の一つが、公証役場での定款認証です。公証人が定款内容を確認・認証する手続きで、これにより定款に法的な効力が付与されます。
公証役場での実務において、司法書士として感じるのは「事前準備の重要性」です。定款の記載内容(特に目的欄)について公証人から修正を求められることがあります。特に、後から許認可業種(建設業・宅建業・介護事業等)に進出することを念頭に置いている場合は、設立時の定款に事業目的を適切に盛り込んでおかないと、後日、定款変更登記が必要になりコストが二重にかかります。
合同会社には公証役場での定款認証が不要なため、この手間とコストがまるごとかかりません。
(3)設立までの標準的なスケジュール
① 株式会社の設立スケジュール(電子定款の場合)
準備開始からおよそ2〜3週間が目安です。定款作成→公証役場での認証(1日)→設立登記申請→法務局での審査期間(約5〜7営業日)→登記完了、という流れです。
② 合同会社の設立スケジュール
公証役場のステップが省略できるため、準備が整えば1〜2週間での設立が可能です。ただし、登記申請後の法務局の審査期間は株式会社と変わりません。
(4)Q&Aボックス①:設立費用に関するよくある疑問
Q. 「資本金1円でも会社が設立できる」と聞きましたが、本当ですか?
A. 法律上は1円でも設立可能です。しかし実務上は資本金が少なすぎると銀行口座の開設審査や取引先からの信用評価に大きく影響します。一般的に、株式会社・合同会社ともに、少なくとも100万円以上、業種によっては300万〜500万円の資本金を確保することが推奨されます。また、許認可が必要な業種(建設業・宅建業など)では、法律で最低資本金が定められている場合もあります。設立後すぐに事業を軌道に乗せる予算計画とあわせて、司法書士や税理士に相談されることをお勧めします。
第3章 税務・融資・銀行口座開設における実務上の差異
(1)法人税制上の扱い——両者に実質的な差はない
よく誤解されますが、法人税の税率や課税体系は、株式会社と合同会社でほぼ同じです。どちらも法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税の対象となります。「合同会社は個人事業主に近い税制(パス・スルー課税)が適用される」という情報を目にすることがありますが、これはアメリカのLLC制度に関する話であり、日本の合同会社には適用されません。
日本の合同会社は、あくまでも法人として課税され、税務申告も株式会社と同様に法人税申告書(別表)を用いて行います。役員報酬(業務執行社員への報酬)の損金算入ルールも、基本的に株式会社の役員報酬と同様の扱いです。
(2)金融機関の融資審査における実態
融資(金融機関からの借入)において、株式会社と合同会社の間には明確な扱いの差が存在します。
日本政策金融公庫(政策金融公庫)や信用保証協会付き融資については、法人形態による制度上の区別はありません。しかし、民間の金融機関(メガバンク・地方銀行・信用金庫)の実態として、合同会社は審査の段階で「なぜ株式会社ではないのか」と質問されるケースがあります。
その背景には、以下の点があります。
- 合同会社は株式会社に比べて設立数が圧倒的に少なく、融資担当者が制度に不慣れなことがある
- 社員の持分譲渡が複雑なため、万が一の代表者変更時の対応が不明確に映ることがある
- 決算公告が義務でないため、財務情報の透明性が低く見える場合がある
堺市内の金融機関(信用金庫・地方銀行)との付き合いの中で実感するのは、担当者の知識レベルによって合同会社の評価にバラつきがあるという点です。合同会社で融資を申し込む際は、業歴・実績・事業計画の説得力で補う必要があり、スタートアップ段階では株式会社のほうが印象をコントロールしやすいケースがあります。
(3)銀行口座の開設実務
法人口座の開設審査は、株式会社・合同会社ともに厳格化しています。特に2020年以降、マネーロンダリング対策の強化により、設立から間もない法人は開設を断られたり、審査が長期化したりするケースが増えています。
① 大手メガバンクでの口座開設
三菱UFJ・みずほ・三井住友などのメガバンクでは、設立直後の法人(特に一人会社)の口座開設審査が厳しく、事業実態や取引先の存在、Webサイトの充実度などを細かく確認されます。合同会社であることが直接の不可理由になることは稀ですが、「知名度の低い法人形態」として審査担当者が慎重になることは否定できません。
② ネット銀行・信用金庫の活用
GMOあおぞら・住信SBIネット銀行・PayPay銀行などのネット銀行は、法人形態による差をつけず、事業計画や代表者の属性で審査する傾向があります。また、地域の信用金庫(堺市近辺では泉州産業信用組合・大阪協栄信用組合等)は、担当者と直接対面で関係を構築できるため、合同会社であっても信頼関係を丁寧に構築すれば口座開設が実現しやすいです。
(4)消費税・インボイス制度との関係
消費税の適格請求書発行事業者(インボイス)登録については、株式会社・合同会社ともに同一の制度が適用されます。インボイス制度の観点から、法人形態による差はありません。ただし、設立期に課税事業者を選択するかどうかの判断は、事業の性質・取引先の属性・初期投資の規模によって異なるため、税理士との連携が不可欠です。
第4章 経営・ガバナンス・将来の出口戦略から見た比較
(1)株式譲渡と持分譲渡——出口戦略を左右する最大の差
M&A(企業売買)・事業承継の観点から見たとき、株式会社と合同会社の差は非常に大きくなります。
株式会社では、株式を第三者に譲渡することで会社の支配権を移転できます。定款で「株式の譲渡には取締役会(または株主総会)の承認が必要」と定めている場合でも、その手続きを踏めば譲渡は可能です。M&Aの際には株式譲渡契約によって会社ごと売却するスキームが一般的で、買い手にとって手続きがシンプルです。
一方、合同会社では持分の譲渡に、原則として他の社員全員の同意が必要です(定款で別段の定めをすることも可能ですが)。買い手企業(M&A相手)からすると、社員全員の同意取得が手続きの障壁となり、合同会社はM&Aのスキームとして敬遠されることがあります。
① 事業承継における合同会社のリスク
合同会社では、社員が死亡した場合、定款に「相続人が持分を承継できる」旨の条項がない限り、その持分は会社に戻り(払戻し)、遺族が会社を引き継ぐことができません。株式会社の株式相続と比べて、事業承継においては合同会社は相当程度の定款設計上の工夫が必要です。設立時に「相続人が社員として加入できる」旨の定款規定を盛り込むことが実務上の常識ですが、これを知らずに設立してしまう方が少なくありません。
② IPO(株式上場)の可能性
株式会社のみが上場できます。合同会社のままでは、東京証券取引所への上場は不可能です。スタートアップとして将来的にVC(ベンチャーキャピタル)からの出資を受けてIPOを目指すのであれば、最初から株式会社を選択するか、合同会社から株式会社への組織変更(法人格の変更)が必要になります。
(2)組織変更の実務——合同会社から株式会社へ
合同会社から株式会社への組織変更は、会社法上は可能です(会社法第2編第9章)。手続きとしては、社員全員の同意(組織変更計画書の作成)→債権者保護手続き(公告・催告、最低1か月)→組織変更の効力発生→変更登記申請、という流れです。
費用は、登録免許税として合同会社の解散登記3万円+株式会社の設立登記費用(最低15万円)の合計最低18万円に加え、司法書士報酬・定款認証費用等が別途かかります。「最初から株式会社にしておけばよかった」と後悔される方の多くは、この組織変更コストを予期していなかった方です。
(3)ガバナンス・コンプライアンスにおける差異
① 役員任期の有無
株式会社の取締役の任期は原則2年(非公開会社は最長10年まで定款で延長可能)であり、任期ごとに重任登記(登録免許税1万円)が必要です。合同会社に役員任期という概念はなく、業務執行社員はそのまま業務を継続できます。この点では合同会社のほうが管理コストが低くなります。
② 決算公告義務
株式会社は毎年、貸借対照表(または要旨)を官報等に公告する義務があります(会社法第440条)。違反しても罰則はほとんど実施されていませんが、形式上の義務は存在します。合同会社にはこの義務がありません。
(4)社名・ブランディングの実態
取引先・顧客・金融機関の多くは、依然として「合同会社」よりも「株式会社」に対して高い信頼感を持つ傾向があります。特にBtoBビジネスで大企業・官公庁を取引先とする場合、「合同会社」という名称が原因で名刺交換の際に説明が必要になるシーンが生まれることがあります。
一方で、Amazon Japan・Apple Japan・Google Japan・P&Gジャパンなど、グローバル大企業の日本法人が合同会社を選択しているケースもあります。これらは外国親会社の意向やグループ内ガバナンス上の理由によるもので、一般的な中小企業の判断基準とは異なります。
第5章 まとめ:どちらを選ぶべきか|ケース別判断基準と司法書士への相談タイミング
(1)ケース別・会社形態の選択基準
以下の表を参考に、ご自身の状況にあてはめてみてください。
| あなたの状況・将来像 | 推奨する会社形態 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 将来的にIPO・VC出資を目指している | 株式会社一択 | 合同会社では上場・外部投資が不可 |
| 大企業・官公庁と取引するBtoBビジネス | 株式会社を推奨 | 信用力・取引先からの印象が有利 |
| 許認可が必要な業種(建設・宅建・介護等) | 株式会社を推奨 | 許認可申請時の信頼性・金融機関評価 |
| 小規模・一人で完結するビジネス(EC・士業など) | 合同会社も選択肢 | 設立コスト削減・運営管理の簡素化 |
| 家族経営・信頼できる少人数の共同経営 | 合同会社も選択肢 | 内部設計の自由度・役員任期なし |
| 将来M&A・事業売却を想定している | 株式会社を強く推奨 | 持分譲渡の複雑さがM&Aの障壁になる |
| 設立コストを最小限に抑えたい副業法人 | 合同会社も選択肢 | 登録免許税・定款認証費用が不要 |
| 迷ったときの基本方針 | 株式会社を選ぶ | 後から組織変更するコスト(最低18万円〜)を避けるため |
(2)定款設計の重要性——どちらを選んでも「最初が肝心」
株式会社・合同会社のいずれを選んだとしても、定款の設計が会社の将来を大きく左右します。よくある失敗例として次のものがあります。
事業目的の過不足については、設立時に見込んでいた事業しか目的に記載しなかったため、後から事業を広げる際に定款変更登記(登録免許税3万円+司法書士報酬)が必要になった例が挙げられます。
合同会社における相続条項の漏れについては、社員が急逝した際に、遺族が持分を承継できずトラブルになった例があります。
役員報酬の設定ミスについては、設立初年度に役員報酬を高く設定しすぎて、売上が立ち上がらない時期にキャッシュが底をつく例があります。
これらは、司法書士・税理士・社会保険労務士が連携して設立時にアドバイスすることで防げる問題です。弊所では、会社設立のご相談に際して、登記書類の作成だけでなく、定款の実質的な設計についても、税理士と連携した総合的なアドバイスを行っています。
(3)Q&Aボックス②:合同会社に関する実務的な疑問
Q. 合同会社を設立して数年後、やはり株式会社にしたいと思ったとき、どのような手続きが必要ですか?費用はどのくらいかかりますか?
A. 合同会社から株式会社への「組織変更」は、会社法上認められた手続きです。ただし、いくつかの点に注意が必要です。まず、社員全員の同意が必要であること。次に、債権者保護手続きとして最低1か月の異議申述期間を設ける公告・催告が必要なこと。この期間のため、申請から効力発生まで最低でも2か月程度かかります。費用については、合同会社の解散登記の登録免許税3万円、株式会社の設立登記の登録免許税最低15万円(資本金によって異なる)、公告費用(官報掲載料)約3万円〜、さらに司法書士報酬・定款認証費用が加わり、合計で30万〜40万円前後になることが多いです。「最初から株式会社にしておいたほうが安かった」というケースが多いため、将来の選択肢を広く持ちたい方は、設立時から株式会社を選ぶことをお勧めします。
(4)司法書士への相談タイミングと弊所のサポート
会社設立の相談は、「会社を作ろうと思ったとき」ではなく、「会社を使って何をしたいか、5年後にどうなっていたいかのイメージが少し固まったとき」が最適です。なぜなら、その将来像によって会社形態・定款内容・資本金額・役員構成のすべてが変わるからです。
弊所(司法書士事務所May)では、大阪府堺市を拠点に、会社設立・商業登記・相続登記を中心とした法務サービスを提供しています。お客様の5年後・10年後を見据えた会社設立プランニングを、堺・堺東エリアの起業家の皆様に提供することを使命としています。初回相談は無料で承っていますので、お気軽にお問い合わせください。
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私が記事を書きました。
中小企業をを元気にする活動をしています!!

司法書士・行政書士/植田麻友
| 1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。 |






