株主に相続が発生した場合|会社経営を守るための手続きと出口戦略
大阪の堺の司法書士の植田麻友です。
弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。
会社の株主が亡くなった場合、その株式は相続財産として遺産分割の対象となります。しかし、株式の相続は現金や不動産の相続と根本的に異なる複雑さを持っています。議決権の帰属、会社の支配権、非上場株式の評価、相続税の申告、そして誰が経営を引き継ぐかという出口戦略——これらが一度に問題として噴き出すのが「株主の相続」です。
特に中小企業・同族会社においては、創業者や大株主が亡くなることで、会社の根幹を揺るがす事態に発展することも珍しくありません。「相続手続きが終わるまで会社の経営が止まってしまった」「相続人が多すぎて株式の行方が決まらない」「兄弟間で経営権をめぐり対立が生じた」——このような相談が、堺の司法書士事務所Mayには後を絶ちません。
本稿では、株主の相続が発生した場合に会社および相続人が直面する法的問題点を、会社法・相続法の両面から体系的に解説します。手続きの流れ、評価の方法、経営権の承継まで、実務の最前線から丁寧にお伝えします。
第1章 株主の相続とはどのような問題か|会社法と相続法が交差する実務の入口
(1)「株式」は相続財産である
株式とは、株式会社に対する出資持分を表す権利の束です。これには議決権・配当受領権・残余財産分配請求権などが含まれており、株主が死亡した場合には、これら一切の権利が相続財産として遺産に組み込まれます。
上場株式であれば市場価格が明確であるため、相続財産としての評価は比較的容易です。しかし、日本の株式会社の99%以上を占める非上場会社の株式は、市場価格が存在しません。そのため、国税庁が定める「財産評価基本通達」に従った評価が必要となり、これが実務上の大きな障壁となります。
(2)相続と会社法の交差点:誰が「株主」になるのか
株主が亡くなり遺産分割が完了するまでの間、その株式は相続人全員の「共有財産」となります。この状態では、株式の権利をどのように行使するかについて、会社法上の重要なルールが適用されます。
会社法第106条は、「共有に係る株式についての権利を行使する者は一人に限られる」と定めています。つまり、複数の相続人が共有する株式については、「権利行使者」を一名選定し、その者の名前を会社に通知しなければ、議決権を行使することができません。
この通知がなされない場合、理論上は株主総会での議決権行使が不可能となり、定足数を満たせない・決議が成立しないといった経営上の重大な障害が生じます。
(3)中小企業特有のリスク:「株主名簿が整備されていない」問題
上場企業と異なり、中小企業では株主名簿の管理が形骸化しているケースが非常に多く見られます。具体的には以下のような問題が頻発します。
- 株主名簿そのものが作成されていない、または記録が古いまま放置されている
- 相続が繰り返されているにもかかわらず名義変更が行われておらず、死亡した人間が「株主」として記録されたまま
- 設立時の発起人が実質的に株主として機能しているが、書類上の整備がなされていない
このような状態で株主の相続が発生した場合、「そもそも誰が何株を持っているのか」を確定することから始めなければならないという、時間とコストを要する作業が必要になります。司法書士・弁護士・税理士が連携して対応する局面です。
第2章 相続発生後に会社で起きること|議決権・配当・経営支配権への影響
(1)遺産分割が完了するまでの「空白期間」のリスク
相続が発生してから遺産分割協議が成立するまでの間、株式は相続人全員の共有状態に置かれます。この期間が長引くほど、会社の意思決定機能が停止するリスクが高まります。
特に問題となるのが株主総会の開催です。定時株主総会は毎事業年度終了後の一定期間内に開催しなければなりませんが(会社法第296条)、権利行使者が指定されていない場合、議決権の行使ができず、取締役の選任・計算書類の承認・剰余金の配当など会社の根幹をなす決議が成立しない事態に陥ります。
① 権利行使者の指定方法と実務上の注意点
権利行使者の指定は、共有者(相続人全員)の多数決(持分の過半数)によって行われます(民法第252条)。ただし、会社側が「この者を権利行使者として認める」と同意しない限り、会社はその権利行使を拒絶できるという点(会社法第106条ただし書)に注意が必要です。
実務では、以下の手順で対応します。
- 相続人全員で権利行使者を話し合い、書面で決定する
- 会社(取締役・代表取締役)に対して「権利行使者選定通知書」を提出する
- 会社側が書面を受領し、株主名簿に記録する
② 権利行使者を決めないとどうなるか(Q&A)
Q:権利行使者を指定しないまま株主総会を開催した場合、決議は有効ですか?
A:原則として、権利行使者が指定されていない共有株式の議決権は行使できないため、その株式を有効な議決権数に算入することはできません。仮に算入して決議を行った場合、その決議は取消事由(会社法第831条)に該当し得ます。ただし、会社側が権利行使者の指定なしに議決権行使を承認した場合(会社法第106条ただし書)は例外的に有効となります。いずれにせよ、後日の紛争を防ぐためにも、速やかに権利行使者を選定し、書面で会社に通知することが不可欠です。
(2)配当請求権と利益の帰属問題
株式が共有状態にある期間中に配当が宣言された場合、その配当金の請求権は共有者全員に帰属します。配当金の分配比率は各相続人の法定相続分に従いますが、遺産分割協議によって特定の相続人が株式を取得した場合、その協議成立前に受領した配当金の精算をどう処理するかという問題も生じます。
これは相続税の申告においても影響を与えるため、税理士と司法書士が連携して対応することが強く推奨されます。
(3)経営支配権の喪失リスク:持株比率が変わることの意味
例えば、創業者が発行済み株式の70%を保有しており、残り30%を社外の少数株主が保有しているケースを考えます。創業者が亡くなり、その株式を配偶者・長男・次男・長女の4人で均等に相続した場合、各人の持株比率はわずか17.5%となります。
この場合、誰一人として単独で普通決議(過半数)すら成立させることができず、従来の「オーナー経営」が崩壊します。さらに、相続人のうち誰かが株式を社外の第三者に売却してしまえば、全く無関係の人物が会社の意思決定に参加する事態も起こりえます。
第3章 株式を誰が引き継ぐか|遺言・遺産分割・種類株式による出口戦略
(1)遺言による株式の承継と限界
遺言(特に公正証書遺言)によって「長男に自社株全株を相続させる」と指定することは、経営承継において最もシンプルかつ強力な方法です。遺言があれば、遺産分割協議を経ることなく特定の相続人が株式を取得できるため、会社の支配権が分散するリスクを最小化できます。
ただし、遺言には以下の限界があります。
① 遺留分との関係
長男に全株式を相続させる旨の遺言があっても、他の相続人(配偶者・子)には「遺留分」が認められます。遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額の金銭請求(民法第1046条)を行使することができます。
重要なのは、令和元年(2019年)の改正民法により、遺留分の主張は「現物返還」ではなく「金銭での支払い」となった点です。これにより、株式そのものの返還は求められなくなった反面、後継者(長男)は多額の遺留分相当額を現金で支払わなければならない可能性があります。この資金手当ての問題は「事業承継ファイナンス」として近年注目されています。
② 相続人以外への遺贈と株式の移転
遺言によって相続人以外(従業員・共同経営者等)に株式を遺贈することも理論上は可能です。ただし、株式の移転には会社の承認が必要な場合(定款に「譲渡制限」が設けられている場合)があり、相続人以外への遺贈が承認されない場合には、会社が当該株式を買い取ることとなります(会社法第140条)。
(2)遺産分割によるリスク:経営権の分散
遺言がなく、遺産分割協議で株式を分割して複数の相続人が取得した場合、経営権が複数人に分散することによる意思決定の停滞・対立のリスクが生じます。
特に「会社を継ぐ意思のない相続人」が株式を保有することになった場合、その相続人は配当目的・または経営に介入してくる可能性があります。「株主兼相続人」に会社経営への無関心・敵対心がある場合、少数株主権(帳簿閲覧請求・株主総会検査役選任申立等)が武器として使われるケースも現実に存在します。
(3)種類株式を活用した出口戦略
事前の対策として有効なのが種類株式の活用です。会社法上、以下のような種類株式を設計することで、経営権と財産権を分離することができます。
① 議決権制限株式
議決権のない(または制限された)株式を発行し、経営に関与させたくない相続人にはこの株式を承継させることで、財産上の権利(配当・残余財産)は与えつつ、経営への口出しを防ぐことができます。
② 黄金株(拒否権付株式)
特定の重要事項(役員変更・合併等)について拒否権を持つ株式を1株だけ発行し、後継者や創業者自身が保有することで、仮に過半数の株式を失った場合でも、重要な経営判断を一方的に覆されないための「最後の砦」として機能させることができます。
③ 自己株式取得(会社による買取)
相続人が株式の保有を望まない場合、会社が自己株式として買い取ることも有効な出口戦略の一つです。この場合、買取価格の設定が問題となります。相続税評価額と実際の取引価格が大きく乖離すると、みなし贈与課税の問題が生じる可能性があります。
会社による自己株式取得は、税務上・会社法上の双方から慎重に設計する必要があるため、司法書士・税理士の連携による対応が必須です。
(4)銀行・公証役場との実務上の交渉ポイント
株式の承継に伴い、以下の実務的な交渉・手続きが発生することがあります。
① 金融機関への届け出と融資の維持
株主(特に代表取締役兼大株主)が死亡した場合、金融機関(銀行)は融資先の経営状況を改めて審査することがあります。特に保証人が亡くなった場合、相続人が保証人の地位を相続するため、保証人変更の交渉・新保証人の設定を迅速に行わなければ、融資枠の維持が困難になる場合があります。
② 公証役場での遺言書作成・定款変更認証
事前対策として種類株式を導入する場合、定款変更が必要であり、公証役場での定款認証手続きが発生します。また、遺言書を公正証書で作成することも重要な事前対策であり、公証役場での手続きについては司法書士が原案作成から立ち会いまでをサポートすることができます。
第5章 まとめ:堺の司法書士が伝える「株主相続」を放置してはいけない理由
(1)株主相続を放置した場合に起こること:チェックリスト
以下の項目に一つでも該当する場合は、早急に専門家への相談を検討してください。
- 株主(特に大株主・創業者)に病気・高齢などのリスクがある
- 株主名簿が整備されていない、または古いままになっている
- 後継者が定まっていない、または複数の候補がいる
- 相続人の間に感情的な対立や利害の不一致がある
- 自社株の評価額が高く、相続税の負担が大きいと予想される
- 会社の融資に個人保証が付いている
- 定款に株式の相続承認制限規定(相続人への売渡請求条項)がある
特に「相続人への売渡請求条項」(会社法第174条)が定款に設けられている場合、相続人は会社から株式の売り渡しを請求される可能性があります。この規定の存在を知らずに相続手続きを進めると、せっかく取得した株式を後から会社に買い取られてしまうという事態も起こりえます。
(2)司法書士・税理士への相談タイミング
理想的な相談タイミングは「相続が発生する前」です。しかし、実際には相続が発生してから初めて相談に来るケースが圧倒的多数です。そのような場合でも、相続発生後できる限り早期(少なくとも申告期限の3ヶ月前まで)に専門家に相談することで、対処できる選択肢の幅が大きく異なります。
具体的に司法書士が対応できる範囲は以下の通りです。
① 司法書士が担当する業務
- 相続人の確定(戸籍収集・相続関係説明図の作成)
- 株式の名義変更(株主名簿の書換え請求)
- 遺産分割協議書の作成
- 定款変更(種類株式の導入・相続人への売渡請求条項の設定・削除)
- 公正証書遺言の原案作成・公証役場への同行
② 税理士が担当する業務
- 非上場株式の相続税評価(類似業種比準価額・純資産価額の計算)
- 相続税申告書の作成・提出
- 生前の節税対策(持株会社スキーム・役員退職金等)
(3)当事務所からのご案内
「株主(創業者)が亡くなったが、相続人の誰が株式を引き継ぐべきかわからない」
「自社株の評価が高すぎて相続税の支払いが心配だ」
「株主名簿が整備されておらず、誰が何株持っているか不明な状態になっている」
南海堺東駅近くの当事務所では、司法書士としての専門的な法務知識はもちろん、地元堺・堺東エリアの経営者・ご家族の視点に立った「生きたアドバイス」を提供しています。株式の名義変更・遺産分割協議書の作成・定款変更まで、株主相続に関わる司法書士業務をワンストップでご対応いたします。税務については信頼できる税理士とのネットワークによりご紹介・連携も可能です。
株主の相続は、会社の命運を左右する重大事です。「まだ大丈夫」と思っているうちに手を打つことが、会社と家族を守る最善の選択です。まずはお気軽にご相談ください。堺の司法書士、植田麻友が貴社の発展のために力を尽くします。
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私が記事を書きました。
中小企業を元気にする活動をしています!

| 1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。 |






