【令和7年度版】知らないと怖い「みなし解散」の仕組みと対策のすべて

【令和7年度版】知らないと怖い「みなし解散」の仕組みと対策のすべて

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

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相続・遺言を含めた生前対策と会社の登記を専門とした司法書士事務所です。

堺での相続相談は司法書士事務所Mayまで。

「うちは毎日ちゃんと営業しているから大丈夫」

多くの経営者様がそう思っているかもしれません。しかし、ある日突然、取引先との契約や銀行融資の審査の場で、「あなたの会社は、登記上存在しません」と告げられる可能性があります。

これは決して大げさな話ではなく、毎年多くの企業が直面している「職権解散」、通称「みなし解散」という現実です。

この制度は、会社の事業活動の実態とは一切関係なく、たった一つの管理業務を怠っただけで、法務局によって強制的に会社を解散させられてしまう、いわば「静かなる会社のリスク」です。

この記事では、「みなし解散」とは一体何なのか、その基本的な仕組みから、具体的な手続きの流れ、そして万が一対象となってしまった場合の回避策や会社を復活させる方法まで、解説します。

会社の存続に関わる重要な知識です。ぜひ最後までお読みいただき、自社の現状をチェックするきっかけにしてください。


1. そもそも「みなし解散」って何?制度のキホンを知ろう

まずは、なぜこのような制度が存在するのか、その仕組みと背景を正しく理解することが重要です。

◆ 「休眠会社」になると対象に!法律上の定義とは?

みなし解散の対象となるのは、法律上「休眠会社」と定義された株式会社です。

会社法では、休眠会社を「当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの」と定めています。

ここで最も重要なポイントは、これが登記記録だけに基づく機械的な判断だという点です。たとえ会社が毎日しっかりと利益を上げ、従業員を雇用し、税金を納めていたとしても、最後の登記から12年間、一度も登記手続きを行っていなければ、法律上は「休眠会社」として扱われてしまうのです。

この「12年」という期間は、株式会社の役員の任期と深く関係しています。非公開会社の取締役の任期は、定款で定めることで最長10年まで伸長できます。任期が満了すれば、たとえ同じ人が再任(重任)する場合でも、その旨の役員変更登記を法務局に申請する義務があります。

つまり、どんな会社でも、少なくとも10年に一度は登記申請を行う機会があるはずです。この最長任期に2年の猶予期間を加えた「12年」という期間は、法人としての基本的な義務を果たしていない会社を特定するための、合理的な基準なのです。

【豆知識】法人形態による期間の違い
株式会社以外の法人の場合は、この期間が異なります。例えば、一般社団法人や一般財団法人の場合は、最後の登記から5年で休眠法人とみなされ、みなし解散の対象となります。

◆ 法的根拠は「会社法第472条」

みなし解散の制度は、「会社法第472条」という法律に基づいて運用されています。この条文の要点を簡単にまとめると、次のようになります。

「最後の登記から12年経った株式会社(休眠会社)に対し、法務大臣が官報で『2ヶ月以内に事業を続けている届出をしなさい』と公告します。もし期間内に届出も登記もしなかった場合、その会社は期間満了をもって解散したとみなします。」

このルールにより、法務局は個別の事情を聞くことなく、形式的な要件だけで解散の登記を職権で行うことが可能になっています。

◆ なぜ、みなし解散制度は存在するの?

なぜ国は、登記がないという理由だけで会社を解散させてしまうのでしょうか。法務省はその目的として、主に二つの理由を挙げています。

  1. 商業登記の信頼性を守るため 
    商業登記は、会社の情報を社会に公開し、取引の安全を守るための重要なインフラです。もし登記簿に、活動実態のない「幽霊会社」が多数放置されていれば、登記情報そのものの信頼性が揺らぎ、経済活動の妨げとなります。定期的に休眠会社を整理することで、登記簿の情報をクリーンに保っているのです。
  2. 休眠会社が犯罪に悪用されるのを防ぐため
    長年放置された休眠会社は、詐欺やマネーロンダリングといった犯罪の隠れ蓑として悪用される危険性があります。みなし解散は、こうした犯罪の温床となりうる法人を社会から排除するための、予防的な措置としての役割も担っています。

2. 解散までの手続きのタイムライン

みなし解散の手続きは、毎年、全国一斉に決まったスケジュールで進められます。ここでは令和7年度(2025年度)のケースを例に、その流れを時系列で見ていきましょう。

【STEP 1】官報公告(令和7年10月10日 金曜日)

すべての手続きは、法務大臣による「官報公告」から始まります。この日、国の広報誌である官報を通じて、全国の休眠会社に対し「事業を継続するなら2ヶ月以内に届け出てください」という公告が行われます。これが、法的手続き開始の合図です。

【STEP 2】法務局から通知書が届く(公告と同時期)

公告とほぼ同じタイミングで、管轄の法務局から代表者宛に「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」といった通知書が郵送されます 。この通知書には、このまま放置すると解散させられてしまうこと、そしてそれを回避するための手続きが記載されています。

【最重要注意点】通知書が届かなくても手続きは進む!

この通知書が、何らかの理由で会社に届かなかったとしても、手続きは止まりません。例えば、本店移転登記を怠っていた場合、通知書は古い住所に送られ、会社は何も知らないまま解散手続きが進んでしまいます。

法律上は官報への公告をもって全国民に告知されたとみなされるため、「通知が届かなかった」という言い訳は通用しません。登記情報を最新に保つことは、会社側の責任なのです。

【STEP 3】運命の2ヶ月間(期限:令和7年12月10日 水曜日)

官報公告の日から2ヶ月間が、会社の運命を分ける猶予期間です 。この期限日までに、後述する「登記申請」または「事業を廃止していない旨の届出」のどちらかのアクションを取る必要があります。起算点は「通知書を受け取った日」ではなく官報公告の日」なので注意しましょう。

【STEP 4】みなし解散の登記(令和7年12月11日 木曜日)

期限までに何のアクションも起こさなかった場合、その翌日をもって、会社は法律上「解散したものとみなされます」。そして、法務局の登記官が職権で、会社の登記簿に「令和7年12月11日会社法第472条第1項の規定により解散」といった記録を書き込みます。

この登記が完了した瞬間から、会社の法的地位は大きく変わり、通常の事業活動はできなくなります。


3. 「みなし解散」から会社を守る2つの方法

法務局から通知書が届いても、期限内であれば解散を回避できます。選択肢は大きく分けて二つです。

① 根本的な解決策:「登記申請」を行う

最も確実で推奨される方法は、期間内に必要な登記申請を行うことです。

多くの会社が休眠状態になる原因は、役員の任期満了に伴う「役員変更登記」を忘れていることです。この機会に、長年放置していた役員変更登記や、もしあれば本店移転登記などをすべて済ませてしまうのが最善策です。これにより、みなし解散を回避できるだけでなく、会社の登記情報が現状と一致し、法的な義務も果たせます。

② 一時的な応急処置:「まだ事業を廃止していない」旨の届出

もう一つの方法は、「まだ事業を廃止していない」旨の届出書を管轄の法務局に提出することです。法務局から送られてきた通知書に同封の書式を利用するか、所定の事項を記載した書面を提出します。

ただし、これはあくまでその年のみなし解散を回避するための一時的な措置です。根本原因である登記の懈怠は解消されていないため、翌年には再び休眠会社として同じ通知が送られてきます 。すぐに登記の準備ができない場合の「時間稼ぎ」と考え、速やかに専門家に相談しましょう。

※ 隠れたコスト:登記懈怠に対する「過料」に注意!

みなし解散を回避できても、安心はできません。長期間にわたり登記を怠っていた事実(登記懈怠)そのものに対して、ペナルティが課される可能性があります。

会社法では、正当な理由なく登記を怠った場合、代表者個人に100万円以下の過料(かりょう)が科されると定められています。これは会社の経費にはできず、代表者が個人で支払う金銭的な制裁です。金額は懈怠期間に応じて数万円から十数万円になることが多く、みなし解散の通知をきっかけに登記を申請した後、裁判所から代表取締役の自宅に通知が届くのが一般的です 。


4. もし解散してしまった場合どうすべきか。

もし期限内に対応できず、みなし解散の登記がされてしまっても、すぐに諦める必要はありません。会社を復活させるための「最後のチャンス」が残されています。

下の表で、自社がどの段階にあるかを確認し、適切な行動を取りましょう。

段階 期間 会社の法的地位 やるべきこと
休眠状態 最後の登記から12年以上経過 活動中だが、みなし解散リスクあり。 【予防】 速やかに役員変更登記などを申請し、12年のカウントをリセットする。
通知期間 官報公告から2ヶ月以内 みなし解散の対象だが、まだ活動中。 【回避】 「登記申請」または「事業を廃止していない旨の届出」を行う。
みなし解散後 みなし解散の登記日から3年以内 「清算会社」となり、通常の事業活動は不可。 【復活】 株主総会の特別決議で「会社継続」を決定し、2週間以内に登記申請する。
復活期間経過後 みなし解散の登記日から3年以上経過 完全に清算手続き中の会社。 【復活は不可能】 正式な清算手続きを進め、会社を閉鎖する。

◆ 3年間の猶予期間:「会社継続」という選択肢

みなし解散の登記がされても、その日から3年以内であれば、会社を解散前の状態に戻すことが法的に認められています。

この期間中、会社の法的ステータスは「清算会社」となり、新たな契約や販売といった通常の営業活動はできず、債権回収や債務弁済など、清算に必要な行為に活動が限定されます。

◆ 3年が過ぎたら…もう後戻りはできない

みなし解散の登記から3年という期間は、法律で定められた厳格な期限です。この期間を1日でも過ぎると、会社を継続させることは二度とできなくなります

その場合、残された道は正式な清算手続きを進めて法人格を完全に消滅させることだけです。


5. 「清算結了」までの道のり

「解散」は会社の活動停止を意味しますが、法人格が即座に消滅するわけではありません。解散は、会社を完全に消滅させるための「清算手続き」のスタート地点です。会社が法的に完全に消滅するのは、「清算結了」の登記が完了した時です 。

会社継続を選ばない(選べない)場合、以下の清算手続きを進めることになります 。

  1. 清算人の就任: 清算手続きを行う「清算人」が就任します(みなし解散の場合、通常は解散時の取締役が就任)
  2. 財産調査と公告: 会社の財産を調査し、官報で債権者に名乗り出るよう呼びかけます 。
  3. 債権回収と債務弁済: 売掛金などを回収し、借入金などを支払います。
  4. 残余財産の分配: すべての債務を支払った後に残った財産を、株主に分配します。
  5. 税務申告: 解散事業年度や清算中の確定申告など、複数回の税務申告を行います 。
  6. 清算結了登記: 清算の決算報告書を株主総会で承認してもらい、2週間以内に法務局へ「清算結了登記」を申請します。この登記が受理された時点で、会社の法人格は完全に消滅します。

まとめ:他人事ではない「みなし解散」。今すぐできることから始めよう

「みなし解散」は、事業の実態とは無関係に、登記記録という形式的な基準だけで執行される、静かで強力な法制度です。その引き金は、たった一つの管理業務、すなわち「定期的な登記申請」を怠ることです。

  • 予防策: 期限内に必要な登記を行うか、少なくとも「事業を廃止していない旨の届出」を提出する。
  • 復活策: 万が一解散されても、3年以内なら会社を継続できる。

このリスクに対する最も効果的な対策は、受け身で通知を待つのではなく、自社の登記状況を積極的に管理することです。

まずは、自社の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得し、「最後に登記申請をしたのはいつか」を確認することから始めてみてください。もし最終登記日から10年近く経っているなら、すぐに役員の任期を確認し、必要な登記の準備を進めるべきです。

自社の状況がわからない、法務局から通知が届いてしまった、あるいは会社継続の手続きが必要になった場合は、速やかに司法書士などの専門家にご相談ください。少しの注意と早めの行動が、あなたの会社を意図せぬ消滅から守るための鍵となります。

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1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。
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