【未成年が相続人の場合の相続登記】―家庭裁判所の特別代理人選任とその注意点

【未成年が相続人の場合の相続登記】―家庭裁判所の特別代理人選任とその注意点

~堺市で相続手続きをお考えの方へ、司法書士が詳しく解説~

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

 

相続登記の手続きを進める際、「相続人の中に未成年者がいる」というケースは珍しくありません。特に親子で相続人になる場合や、夫婦の一方が亡くなった場合に、残された配偶者と未成年の子どもが共同で相続する状況が多く見られます。

このような場合、未成年者の代理人である親(法定代理人)と利益が相反するため、そのまま手続きを進めることができません。解決のためには、「特別代理人」の選任という家庭裁判所の手続きが必要です。

相続登記とは?

相続登記とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた不動産を、相続人の名義に変更する登記手続きです。令和6年4月からは相続登記の義務化が始まり、正当な理由がないまま登記を放置すると過料(10万円以下)の対象となる可能性があります。

相続人に未成年者がいるときの問題点

未成年者は、自ら法的な契約行為を行うことができないため、通常は親などの法定代理人が代わりに行います。しかし、親自身も相続人である場合は「利益相反」の状態となります。

例:夫が死亡 → 妻と未成年の子が相続人になる場合

この場合、妻が未成年の子の代理として登記手続きを進めると、妻がより多くの財産を取得するよう誘導してしまう可能性があるため、公平性を保つ必要があります。

特別代理人の選任とは?

このような利益相反がある場合には、家庭裁判所に申し立てを行い、「特別代理人」の選任を受ける必要があります。特別代理人とは、未成年者の利益を守るために一時的に代理人として選任される第三者です。

家庭裁判所での手続きの流れ

  1. 管轄の家庭裁判所に「特別代理人選任申立書」を提出
  2. 提出時に遺産分割協議書案も提出
  3. 家庭裁判所が審理を行い、適格な代理人を選任
  4. 審判書の確定後に、相続登記手続きへ進む

詳細・申立書式は、家庭裁判所の公式ページをご確認ください
👉 特別代理人の申立て(裁判所公式HP)

遺産分割協議書案の注意点

特別代理人を選任する場合には、遺産分割協議書案も提出することが一般的ですが、その場合には、未成年が法定相続分を確保していることが原則必要となります。特別代理人はあくまでも未成年の代理人であり、その未成年が不利益を被ることは原則許されないためです。ただし、未成年といっても幼児から高校生までさまざまです。その年齢によって、今度のどのような人生を過ごすかが変わりますので、遺産分割協議書案を提出する場合には、額面通り法定相続分を確保する以外に必要な提案をすることも可能です。

このあたりは専門家に相談しながらすすめることをおすすめいたします。

特別代理人の選任にかかる期間

家庭裁判所への申し立てから、選任決定が下りるまでには通常2か月程度を要します。内容によっては半年ほどかかる可能性もあります。

選任が確定しなければ相続登記を進められないため、登記期限(3年以内)に注意が必要です。

未成年が相続人となり特別代理人選任が必要な主なパターン

  • 配偶者と子(未成年)が相続人になるケース

この場合、相続人は配偶者と子になります。子は未成年の場合、親が親権者(代理人)ですが

よくあるトラブル・注意点

  • 「すでに相続登記が済んでいるが、未成年の利益相反を見逃していた」→ 法的に無効とされる可能性。
  • 「家庭裁判所に申立てたが、必要書類の不備で却下された」→ 事前の確認が重要。

よくある質問(Q&A)

Q1:特別代理人は誰でもなれますか?

一般的には親族や信頼できる第三者が選任されますが、裁判所の判断によります。

 

Q2:司法書士が特別代理人になることはできますか?

はい、司法書士や弁護士などの専門職が選ばれることもあります。

 

Q3:未成年が2人以上いる場合、特別代理人はそれぞれ必要ですか?

それぞれの選任が必要となります。

 

Q4:相続税の申告がある場合、特別代理人選任は間に合いますか?

相続税の申告期限(10か月以内)との兼ね合いに注意。早めの申立てが大切です。なお、相続税が発生することを条件として法定相続分を確保しないという遺産分割協議書案は通らない可能性が高いです。相続税は不利益ではなく、義務であるという判断です。

 

Q5:相続登記の義務化で、特別代理人選任も急ぐべきですか?

はい。選任に1か月以上かかるため、相続発生後すぐに動き出すのが望ましいです。また裁判所が忙しければさらに時間がかかるおそれがあります。

専門家に相談するメリット

家庭裁判所とのやり取りや、登記書類の作成に不安がある方は、司法書士に相談することで手続きをスムーズに進められます。

まとめ

未成年が相続人となる場合の相続登記は、通常よりも煩雑な手続きが必要です。利益相反を避けるための特別代理人の選任、裁判所への申立て、そして相続登記の義務化など、慎重な対応が求められます。

早めの準備と専門家のサポートが重要です。 ご自身で対応が難しいと感じた場合は、ぜひお近くの司法書士にご相談ください。

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。
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