会社設立時の「本店所在地」はどう決める?
~登記・税務・実務から見た慎重な判断ポイント~
大阪の堺の司法書士の植田麻友です。
弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。
はじめに|本店所在地は「どこでもいい」は本当か?
会社設立時に決める「本店所在地」。
つい「自宅でいい」「バーチャルオフィスを借りればいい」など、軽く考えがちな項目ですが、将来的な運営や法務・税務面に大きな影響を与える重要事項です。
この記事では、会社設立登記における本店の定義から、バーチャルオフィスや自宅を使う場合の注意点、許認可・銀行口座・法務局の管轄との関係まで、専門家視点で詳しく解説します。
本店とは何か?法律上の定義とその意味
会社法第11条では、会社は本店を設置することを定めています。
本店=会社の主たる事務所であり、登記、税務、許認可、裁判管轄の起点になる「法人の住所」となります。
本店所在地に求められる性質とは?
実在性・継続性・使用権限の3つがポイントです。
- 実在性:登記できる現実の住所で、郵便物が届くこと。必ず郵便局への届出や表札等を設置することで郵便物が届くようにしてください。
- 継続性:一時的な拠点でなく、将来も使用する見込みがあること
- 使用権限:自己所有、もしくは賃貸契約などで正当な使用ができること。登記では不要ですが許認可の中で権限の確認が必要となる場合もあります。
登記時の本店所在地の記載方法
- 定款:市区町村まで(例:堺市北区)
- 登記申請書:丁目・番地・号まで(例:堺市北区中百舌鳥町5丁12番34号)
定款の表記は簡略に、登記で詳細住所を補足する形が一般的です。
小テーマ①|バーチャルオフィスを本店とする場合の注意点
メリット
- 初期・ランニングコストを抑えられる
- 自宅住所を公開せずに済む
- 都心一等地の住所を利用できる
デメリット・注意点
- 銀行口座開設や融資で不利だと言われている。※ネット銀行を除く。
- 許認可取得が困難(建設業・古物商等場所の要件があるもの)
- 事業実体が乏しいと判断される恐れあり
特に銀行口座開設については、新規法人の口座開設がバーチャルオフィスであるか否かを問わず困難で状況であるためマイナスに評価される可能性があるのは否めません。バーチャルオフィスの住所を使う際は、使用証明書の取得・将来の信用リスクを十分に確認しましょう。
小テーマ②|自宅を本店とする場合の注意点
メリット
- 費用がかからない
- 郵便物管理がしやすい
- 即日で設立に進める
デメリット・注意点
- 賃貸の場合、事業利用不可の契約があることも。必ず管理会社に確認をしましょう。
- 住所が公開される(プライバシーの懸念)
- 来客や郵便物の受け取りが難しいケースもある。賃貸の自宅の場合だとサロン等来客を伴うものは認められにくいです。
法務局の管轄との関係
本店所在地によって、登記を申請する法務局が変わります。
例:堺市の場合 → 大阪法務局 堺支局
所在地:堺市堺区南瓦町1番19号
https://houmukyoku.moj.go.jp/osaka/
バーチャルオフィスを利用する場合は、使用権限を示す書面が必要になるケースもあります。
許認可・融資・税務にも関わる重要ポイント
- 許認可:実体のない本店では許可が下りない業種もあります。
- 銀行口座:信用調査で本店の内容が重視される。事務所を借りれることも信用のひとつになります。
- 融資:日本政策金融公庫などでは「事務所の実体」が必須とされていますが、バーチャルオフィスであることが融資できない理由にはなりません。あくまで総合的に評価はされます。
「住所だけ借りる」では済まない点が多いため、事業実体のある場所を選ぶのが原則です。
本店移転時の手続きとコスト
- 登録免許税(3万円 or 6万円)※移転先住所により異なります。
- 定款変更(管轄外移転時は特別決議が必要です)
- 税務署・社会保険への変更届
- 各所への案内等印刷物
設立時に安易な住所を選ぶと、後にコストや手間が大きくなります。
まとめ|本店は「法務・信用・成長」を見据えて決定を
- 本店は法人の「顔」。登記や税務の起点になる
- バーチャルオフィス・自宅利用には慎重な判断が必要
- 許認可・融資予定がある場合は、実体ある事務所を選ぶ
設立時から将来の会社成長を見据えて、本店を慎重に設計しましょう。
最後に|本店の設計は専門家に相談を
登記だけでなく、税務・許認可・融資にも影響する本店所在地。
堺市で会社設立を検討中の方は、地元の実情をよく知る司法書士にご相談ください。
本店の選定から登記まで、的確にサポートいたします。
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私が記事を書きました。
中小企業をを元気にする活動をしています!!
司法書士・行政書士/植田麻友
1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。 |
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