株主が分散している会社で気をつけたいポイント|名義株・株券発行・意思決定のリスクとは

株主が分散している会社で気をつけたいポイント|名義株・株券発行・意思決定のリスクとは

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

はじめに|少人数だから大丈夫…と思っていませんか?

会社設立時、親族や知人に出資してもらい、複数の株主がいる形でスタートすることはよくあります。
しかし、株主が分散している会社では後々トラブルに発展するケースも少なくありません。

この記事では、少人数の中小企業や同族会社で起こりやすいリスクを、名義株・株券発行・株主間契約などを含めて詳しく解説します。


株主が分散すると起こりうる問題とは

  • 出資者との関係が薄い(創業者の知人・親戚など)
  • 議決権が均等(例:50%対50%)
  • 株主が高齢で、相続リスクがある
  • 株主が経営に無関心

このような構成は意思決定の停滞・経営の麻痺を招きます。


よくあるトラブル① 意思決定が止まる

持株比率が50%対50%など拮抗していると、重要な決議が通らず、会社が機能不全に陥ることがあります。

  • 定時株主総会で決算の承認ができない
  • 取締役の選任・解任ができない
  • 定款の変更ができない
  • 新株発行ができない

 


よくあるトラブル② 名義株の放置

名義株とは、実際に出資していないにもかかわらず、株主名簿上に名前が記載されている株式のことです。以前は一定数以上の株主が必要であったために、昔は出資しないないにも関わらず、株主として名前が株主名簿に載っている人がいました。これが名義株・名義株主です。この状態があるのであれば早急に解消する必要があります。

名義株のリスク

  • 相続時に名義人の相続人が株主を主張してくる
  • M&Aや事業承継の障害になる
  • 実質支配者が不明確となり税務調査の対象になることも…(※相続財産)

名義株の対策

  • 株主名簿を実態に合わせて整備する。
  • 名義株に関する合意書をいただき株主名簿を正常な状態に整える。
  • 司法書士や弁護士に相談し法的整備を行う

この時に、株式譲渡契約を行うという方法もありますが、名義株はそもそもその人が正当な株主ではないので、買い取りではなく権利関係の整理を行うために合意書をいただくことをおすすめしています。その際に法律上、印鑑の規定はありませんが、証拠として保全するためにも、自署と実印の捺印、印鑑証明書の保管をおすすめしております。


よくあるトラブル③ 株券発行の定めがあるが発行していない

会社法施行後、原則は株券不発行会社です。
しかし、定款で「株券を発行する」と定めている会社では、原則として株券を発行しなければなりません。また、この法改正時に特に定款を変更しなかった場合、登記簿には「株券発行の定め」が記載されており、会社としては意図せず株券発行会社となっている可能性があります。

株券を発行していないと…

  • 譲渡時に「株券交付がない」ことで無効とされるリスク
  • 名義株・権利帰属トラブルの原因に

株券発行会社においては、株式を譲渡する要件に「株券の交付」があります。そのため、株券発行会社の定めがある場合には、株券がなければ新たに作成し、発行した上で株券の譲受人に交付しなければなりません。交付しなかった場合には譲渡自体が無効となります。株式を譲渡する場合には、経営権の確保や相続税対策等理由があることが多いですから過去の譲渡が無効になると多方面に影響が起こります。特に相続税の場面では税務署が指摘する可能性もありますので注意が必要です。

株券発行の定めを廃止するには

  1. 株主総会の特別決議で定款変更を行う。
  2. 公告または株主への通知(2週間前まで)・
  3. 廃止効力発生日から2週間以内に登記。

定款に株券発行の記載がある会社で、実際に株券を発行していない場合は速やかに廃止手続きを検討しましょう。

株券発行の定めの廃止に関する費用

弊所報酬:73,700円~

登録免許税:30,000円


対策① 株式の集中と譲渡制限

議決権を分散させないよう、株式の買戻し譲渡制限の定款規定を活用することが有効です。

譲渡制限の例(定款)

当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。


対策② 株主間契約を結ぶ

株主間契約は、定款では補いきれないルールをカバーし、将来のトラブルを予防できます。

主な契約内容

  • 株式の譲渡・相続時の承認ルール
  • 配当・退職慰労金の配分
  • 取締役の選任・解任手続き
  • 議決権行使の合意

株主間契約の例文

議決権拘束条項

株主は、株主総会において議決権を行使する際には、他の株主と事前に協議し、合意に従って議決権を行使する。

株式譲渡制限条項

株主は、他の株主の書面による同意なく第三者に株式を譲渡してはならない。

利益配分の取決め

会社の配当は、各株主の出資比率に応じて行う。ただし、特別の合意がある場合はこの限りでない。

契約書は、全株主が署名・押印した上で保管しておくことが重要です。


まとめ|株主構成の「不備」はのちに命取りになる

  • 設立時の株主構成は慎重に!現在は株主が1名でも可能です。

  • 名義株は早期に実態へ合わせる。早期解消は必須です!

  • 株券の管理と定款の整合性を確認。株主が変わった場合はすぐに株主名簿に反映。

  • 株主間の取り決めは明文化しておく。複数株主がいる場合には株主間契約がおすすめ!

会社経営は、表に見える業績だけでなく、「誰が株主か」「どう意思決定するか」といった裏の設計がとても重要です。


最後に|登記・名義整理・契約作成は司法書士へ

株券廃止の登記、名義株の名義変更、株主間契約の作成などは、司法書士の専門分野です。
堺市で会社設立や株主構成にお悩みの方は、地域に詳しい司法書士にご相談ください。

 

 

 

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。
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