配偶者を取締役にする際の注意点|解任・損害賠償のリスクと対策

配偶者を取締役にする際の注意点|解任・損害賠償のリスクと対策

大阪の堺の司法書士の植田麻友です。

弊所は南海堺東駅が最寄りの司法書士事務所です。

はじめに|配偶者を取締役にしても大丈夫?

個人事業から法人化する際や、家族経営を前提とした会社を設立する際、「配偶者を取締役にしようかな?」と考える方は多いでしょう。

取締役に加えることで役員報酬も支給も可能となりますので、税務上の観点も考えると有用な点も多いです。

信頼関係をベースに経営を行える一方で、取締役には法律上の責任が伴います。今回は特に「損害賠償責任」と「解任リスク」について詳しく解説します。


取締役の解任と損害賠償|法律上の枠組み

会社法第339条により、取締役は株主総会の決議でいつでも解任できます。しかし「正当な理由」がない解任は、損害賠償請求の対象となる可能性があります。

正当な理由とは?

裁判所が「正当な理由あり」と認定しやすいケース:

  • 法令・定款違反行為
  • 心身の故障による職務不能
  • 職務に著しく不適格(経営能力の欠如)

ただし、「意見の対立」や「家庭の事情」は正当な理由とは認められにくいです。


判例にみる「正当な理由」の判断例

ロッテホールディングス損害賠償請求事件(東京地裁 平成30年3月29日)

複数の行為が積み重なり、総合的に取締役として不適格と認定。
正当な理由があると判断され、解任は適法とされました。

参考:会社法339条と損害賠償|京浜法律事務所

経営能力の欠如(横浜地裁 平成24年7月20日)

事業の成果が出ず、経費削減努力も不十分だったことから、
経営能力に疑義があると認定され、解任に正当性が認められました。ただし、経営能力の欠如が必ずしも正当な理由にあたるわけではないことに注意が必要です。

参考:取締役解任事例|フォーサイト総合法律事務所

 

正当な理由の判断はかなり難しいです!!


定款変更による任期短縮もリスクになる?

定款変更によって任期を短縮し、任期途中で退任させた場合も、形式的には損害賠償請求の対象となる可能性があります。この場合、退任前提の合意がなければ、「不当な解任」と同視され、報酬や慰労金相当額の請求がされるリスクがあります。

ただし、この方法を利用することで登記簿上の表記は「解任」ではなく「退任」となりますので、対外的な信用度としては有用な方法とも考えられます。登記簿に解任と表記されることは、対外的にも「この会社は揉めている」と感知されることになりおすすめはできません。

また、特例有限会社の取締役については任期を定めなくても問題ございませんが、定めることも可能です。特例有限会社の取締役を退任させたい場合に、定款変更により任期を変更することも方法のひとつであると考えられます。

定款変更で任期満了退任となっても損害賠償請求のリスクは残ります!

登記簿に「解任」と表示されることもデメリットが多いと言われています!


損害賠償額の目安と判例傾向

  • 基本は残存任期分の役員報酬 × 月数
  • ただし、裁判所は「数か月〜2年程度」に限定する傾向あり
  • 慰労金は支給が前提であったことの立証が必要

なお、現実には解任後の再就職可能性や会社の経済状態も加味され、必ずしも全額が認められるわけではありません。


配偶者を取締役にする際の注意点

  1. 任期設定:短期(1〜2年)任期にしておくことで見直しやすくなります。ただし、短期だと登記コストがかかります。
  2. 業務分掌:具体的な担当内容を明文化。
  3. 報酬規程:報酬の妥当性と根拠を整備。
  4. 定款整備:解任や任期短縮に関する規定を整える。定款は最新の法律を反映するようにいたしましょう。
  5. 退職慰労金:金額・支給条件を明記しておく。

Q 取締役の改選にかかる費用を教えてください。

A 弊所で手続きする場合は下記のとおりです。

 取締役の変更(就任・重任)

報酬:48,400円(税込)~ 登録免許税:10,000円~(※資本金により変動いたします)

 定款変更(任期の変更)

報酬;22,000(税込)~

まとめ|信頼だけで任命しない。責任と仕組みを整えることが大切

配偶者を取締役にすることは、経営を家庭と一体化させる大きな判断です。その一方で、「経営責任」や「将来のトラブルリスク」を見据えた制度設計が不可欠です。

配偶者だからといって安易に取締役に加えることは辞めましょう。リスクやデメリットを検討した上で取締役に加入させることをおすすめいたします。

また、取締役としての責任を明確にし、任期・業務・報酬の仕組みを整えておくことで、円満な経営と家庭の両立が可能になります。

不安があれば、定款・登記・経営体制に詳しい司法書士にご相談ください。

 

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。現在は、大阪府堺市で司法書士事務所を開業し、相続・法人(商業)登記をメインに活動をしています。

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