創業時にバーチャルオフィスを利用するメリットとデメリット

創業時にバーチャルオフィスを利用するメリットとデメリット

司法書士の植田麻友です。現在、創業時・法人設立時にバーチャルオフィスを利用するケースが増えています。今回はバーチャルオフィスの利用についてのメリット・デメリットについてはお話させていただきます。便利ではありますが、デメリットもきちんと理解して利用することをおすすめいたします。

1. はじめに

起業を考える際、事務所の所在地をどうするかは重要な検討事項の一つです。
特に、バーチャルオフィスを利用して法人登記をする方法は、低コストで会社を設立できる手段として注目されています。

バーチャルオフィスを活用することで、都心の一等地の住所を利用できる、コストを抑えられるといったメリットがある一方、銀行口座開設や融資審査において不利になるケースがあることを理解しておく必要があります。また、業種によっては許認可の関係でバーチャルオフィスを利用できない場合もあります。

2. バーチャルオフィスとは?

バーチャルオフィスとは、実際に物理的なオフィスを借りずに、法人登記に利用できる住所を提供するサービスです。
一般的に、バーチャルオフィスの利用者は以下のようなサービスを受けることができます。

  • 法人登記用の登記住所利用
  • 郵便物の受取・転送
  • 電話応対(転送・代行)
  • 会議室や作業スペースの一時利用(オプション)

この仕組みにより、特にスタートアップや個人事業主が信用力を高めるための手段として活用することが増えています。
しかし、会社の実態が不透明になりやすいという側面もあり、金融機関の審査では慎重に扱われることが多いのが現状です。


3. バーチャルオフィスのメリット

① 低コストで法人登記が可能

一般的なオフィスを借りる場合、敷金・礼金・保証金などの初期費用に加えて、毎月の賃料や光熱費が発生します。
一方、バーチャルオフィスは月額数千円から利用できるため、圧倒的にコストを抑えることが可能です。

② 事業用の公開住所を自宅とは別に設定できる

法人を設立する際、本店所在地の住所は登記簿謄本に記載され、一般に公開されます。
バーチャルオフィスを利用することで、登記用の住所を自宅とは異なるものに設定できるため、プライバシー保護の観点で一定のメリットがあります。
ただし、税務署への開業届や銀行口座開設時には、事業の実態確認のために自宅住所を求められることがあるため、完全に自宅住所を秘匿できるわけではありません。

原則、代表取締役の住所非表示制度を利用しない限りは代表取締役の個人の住所は登記簿に記載されることになります。バーチャルオフィスを利用して、代表取締役の住所非表示措置をとることについては、バーチャルオフィスの郵便物(特に特別送達・訴状)の受領の取り扱いにより、制度の利用可否が変わりますので注意が必要です。

③ 信用のある住所を活用できる

都心のビジネス街の住所を登記に使用することで、クライアントや取引先に対して一定の信頼性を確保することができます。
特に、企業の所在地を重視する業種では、ブランドイメージの向上にもつながります。

④ 事務サポートサービスの活用

郵便物の受取・転送、電話代行などのオプションサービスを利用することで、一人で事業を運営する際の負担を軽減できます。なお、口座開設を鑑みると、「郵便物の受取」は必ず契約するようにお願いいたします。郵便物の受領が要件になっている場合が多いためです。

4. バーチャルオフィスのデメリット

① 銀行口座の開設が難しくなる

法人設立後、事業用の銀行口座を開設することが一般的ですが、バーチャルオフィスの住所を本店所在地としている法人は、金融機関から口座開設を拒否されることがあります。

その理由として、

  • 実態のない法人のリスクを銀行が警戒している
  • 犯罪対策の一環として厳格な審査が行われている

ことが挙げられます。
特にメガバンク(都市銀行)や信用金庫では、バーチャルオフィスを本店所在地とする法人の審査が厳格化されています。


② 融資審査で不利になる

創業後、金融機関からの融資を検討する際、審査では「事業の実態が確認できるか」が重視されます。
バーチャルオフィスを本店所在地としている場合、

  • 物理的な事務所がないため、訪問審査が困難
  • 事業の信用力が低いと判断される可能性がある

といった理由で、融資審査に通りにくくなることがあります。


③ ネット銀行との関係性

ネット銀行は、従来の銀行と異なり、非対面での手続きが可能であり、バーチャルオフィスを本店所在地とする法人でも比較的口座を開設しやすい傾向にあります。
ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 事業の実態を証明する書類(事業計画書、取引先との契約書など)の提出を求められることがある
  • 売上や取引内容が不明確な場合、審査が遅れることがある

ネット銀行は審査基準が比較的柔軟ですが、事業の信頼性を証明できない場合は、口座開設が難航する可能性もあります。


5.まとめ

バーチャルオフィスの利用には、

コスト削減

 事業用の公開住所を設定できる

 信用度の高い住所を活用できる

といったメリットがありますが、

 銀行口座(特に地銀・メガバンク)開設が難航する可能性

 融資審査で不利になる可能性 

 許認可業種では利用できないケースがある

という重要なデメリットも存在します。

慎重に検討し、最適な選択を行うためにも、専門家である司法書士に相談しながら会社設立を進めることをおすすめします。

 

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。経営者とその家族まで支援できる企業・事業承継支援を行う。

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