株式会社の解散登記から清算まで

株式会社の解散登記から清算まで

司法書士の植田麻友です。

株式会社を閉じると考えた場合には、「解散」を行う必要があります。これは解散し、登記簿にも記載されるものになります。解散をしますと会社は清算状態に入り、通常の株式会社と異なり営業活動を行うことはできず、清算するための準備に入ります。

今回はそんな株式会社の解散から清算までのお話をさせていただきます。

解散登記申請

株主総会にて解散及び清算人選任決議を行う

株主総会を開催し、解散の決議を行う必要があります。株主総会を実施するためには、株主への通知が必要となるため、事前に弊所では株主の確認をさせていただきます。

株主の構成によりどのように株主総会を開催するかは異なりますが、少数の場合には、株主の同意を得て、書面決議(招集通知を送らず書面のみで完結する決議)を実施いたします。この株主総会の中で、清算人という解散後の会社の業務を担う方を選任いたします。

取締役がそのままスライドして清算人となることも可能ですし、全く違う方が選任されることも問題ありません。

解散日の選び方

解散日は税理士との打ち合わせも必要です。株式会社は解散後は、別途申告が必要となるため、解散日は司法書士のみだけではなく、申告を行う税理士とも相談して決めましょう。月末に定めることが多くなっております。

清算人の選び方

代表取締役がそのままスライドするケースが多くなっておりますが、別の方でも問題ございません。清算人は原則は1名からで可能です。この方が解散後の会社の清算手続きを担うことになりますので、実行力があり動きやすい方を選任することをおすすめしております。例えば、代表取締役が高齢ですぐに動くことが難しい場合には、代表取締役ではないですが、若い平取締役だった方を清算人としてお願いすることもございます。

ただし、清算人にも取締役と同じく欠格事由があるため、注意が必要です。

解散登記を法務局に申請する

解散登記を管轄の法務局に申請いたします。解散時の代表取締役と代表清算人が同一の場合でも、肩書は「代表清算人」に変更をしましょう。また、必ず定款の添付が必要です。それは会社が清算人会設置会社であるか確認するためのものですので、必ず添付するようにしましょう。(※特例有限会社の場合は不要です)

Q 代表清算人となる場合に、印鑑カードはそのまま使えますか。

A 代表清算人と代表取締役が同一の場合には、印鑑カードを継続して使用することも可能です。新規発行することも可能です。ただし、みなし解散の場合には、印鑑カードは失効してしまうため注意が必要です。

株主総会の決議以外での解散事由

株式会社は、株主総会の決議以外でも①存続期間満了等定款で定めた解散事由の発生②合併③破産手続き開始の決定④解散命令等での解散いたしますが、今回は多くある株主総会の決議に絞って解散手続きの流れをご紹介させていただきます。

解散公告の申し込み

解散した場合には、解散公告を行う必要があります。解散公告は、解散の決議日以降に公告掲載を行います。

例えば、10月1日に解散した場合には、最短で10月2日に解散公告の掲載が可能です。この場合、解散公告には、下記の事項を記載いたします。

①解散した旨
②債権の申出がある場合には債権者は2か月以内に申し出る旨

なお、公告方法はそれぞれの会社で定めがありますが、解散公告で必要となるのは官報公告になります。この官報公告掲載の日から2か月は清算はできません。また、この2か月の起算日は解散公告掲載の翌日からであることに注意が必要です。
なお、この2か月の間に申出を行わなかった債権者は、清算手続きから除外することができます。(※把握している債権者は含みません)
また、官報公告申し込みは、申し込みから掲載まで2週間ほどかかりますので、余裕をもった申し込みが必要なことにご注意ください。

解散公告の記載例

解散公告

当社は、令和●●年●●月●●●日開催の株主総会の決議により解散いたしましたので、当社に債権を有する方は、本公告掲載の翌日から二箇月以内にお申し出下さい。

なお、右期間内にお申し出がないときは清算から除斥します。

令和●●年●●月●●●日

東京都港区虎ノ門●丁目●番●号

日本県官報販売所株式会社

代表清算人 日本 太郎

引用元:株式会社兵庫県官報販売所

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(債権者に対する公告等)
第四百九十九条
清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。

(債権者に対する公告等)
第六百六十条
清算持分会社(合同会社に限る。以下この項及び次条において同じ。)は、第六百四十四条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算持分会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。

債権者への個別催告

解散時には、解散公告だけではなく、知れている(把握している)債権者に対しても各別の催告を行う必要があります。これは特に様式は定められておりませんが、記録の残る郵便等で行うことが良いでしょう。

Q 会社が気づいていない債権者がおり、催告書を送らなかった場合はどうなりますか?

A あくまでも個別の催告は知れている債権者のみですので、お送りしなくとも問題はございません。ただ、この債権者は解散公告に気づかなかった場合には、清算手続きから除外されることになります。もちろん、把握している債権者には必ずお送りするようにしてください。

解散の効果

解散した株式会社は清算手続きに入ります。この時、株式会社は清算の目的の範囲内でしか権利能力を有しない状態となるため、一部の行為が不可となります。例えば、合併の際の存続会社になる行為や増資を行うことができません。

清算手続き

清算人が行う清算事務は下記のようなものになります。

・会社の財産調査により、財産目録及び貸借対照表の作成
・事業開始日から解散日までの確定申告書を税務署に提出
・債権の回収、債務の弁済
・資産を売却して換価する
・残余財産があれば株主に分配する

主に税理士や司法書士に依頼しているため、清算人を代理して行ってくれる場合がほとんどですが、もしご自身でされる場合には財産に漏れがないように必ず確認するようにいたしましょう。

Q 取締役会設置会社が解散した場合、株式の譲渡制限規定の変更は必要でしょうか。

A 会社が解散した場合には、取締役ではなく、清算人に移行するので、取締役会はなくなります。(※別途廃止の登記は不要です)この場合、株式の譲渡制限に関する規定を「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を要する」等、取締役会の文言が入っている場合、解散によりそれらの規定の効力が停止されるものとされています。ただし、これに伴い定款変更義務はないとのことです。(登記情報541号28頁)つまり、取締役会設置会社である、清算会社があり得るということです。

といえば、取締役ではなく清算人によって会社が構成されている以上、同時に変更するのが謄本上も明確になるといえるでしょう。

変更例:当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する。

清算結了登記

清算事務が終了しますと、清算株式会社は決算報告を作成し、株主総会の承認を受ける必要があります。この承認により清算結了登記が可能となります。清算結了の原因年月日は、株主総会で承認を得た日となりますので、当該決議によって承認を得た日が、清算結了日となります。

解散から清算結了までのご費用

解散・清算結了登記

報酬 165,000円~

登録免許税 41,000円~ 解散公告 約50,000円

合計 約256,000円

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こちらの書籍を参考に記事を作成しております。

 

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司法書士・行政書士/植田麻友

1988年岸和田生まれ、堺育ち。2011年司法書士試験合格。父親が中小企業経営者であったが、幼い頃に会社が倒産し、貧しい子供時代を過ごした経験から中小企業支援を決意。経営者とその家族まで支援できる企業・事業承継支援を行う。

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